【麻雀小説】中央線アンダードッグ 第22話:先ヅモ【長村大】

おそらく、少し安全に行こうとし過ぎていた。ビビっていくべき牌がいけなくなることで、余計に失点が増えることがある。オリて放銃を免れたとしても点棒が増えることはない、必ず減る。アガれば点棒が減ることはないのだ、当たり前の話だ。

 

少し開き直ったと同時に、手も入るようになってきた。

次回、ようやく初トップ。もちろんまだまだマイナスだが、とりあえず人心地が付いた。帰るまでになんとか負けを半分くらいに減らせたら──一瞬そんな風に思いかけたが、心の中で頭を振って打ち消した。途中で金の事を考えてはダメだ、ただ打つんだ。

本来、麻雀そのものと金は関係ない。「持ち金が寒いからこっちを切る」みたいな、麻雀と財布をごっちゃにした判断がよろしいはずがないのだ。

普通にやれ、普通に。

 

サイドテーブルのウーロン茶とともに口の中に流れ込んできた氷を奥歯で砕く、錠剤をかみしめるように。

少し、歯に沁みた。

 

 

第23話(6月22日)に続く。

この小説は毎週土曜・水曜の0時に更新されます。

 

長村大
第11期麻雀最強位。1999年、当時流れ論が主流であった麻雀界に彗星のごとく現れ麻雀最強位になる。
最高位戦所属プロだったが現在はプロをやめている。著書に『真・デジタル』がある。
Twitterアカウントはこちら→@sand_pudding
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