滝川市
百恵ちゃんが生まれ育った北海道滝川市は控えめに言って住みづらい街だった。豪雪地帯で冬はマイナス10度を下回る日も多かった。かといって夏が涼しい訳でもなく盆地なため気温が30度を超える日もあった。おまけにど田舎で観光できるところといえば羊の牧場のようなものがありそこで羊を愛でた後、隣にある施設でその羊たちのジンギスカンが食べられるというサイコパスのような施設があるくらいだった。
勘のいい読者さんは察しが付くと思うが滝川市はなかなか変わった人間が多い。人口こそ少ないが春になればしっかり変態が湧いて出てくるし、高速で自転車を乗り回す名物おじさんもいる。
馬の散歩がてらどら焼き屋に行ってる人もみたことがあるし、
ミニスキーで移動している老人がいたりとかなりバラエティ色が強いいかれた街である。百恵ちゃんも冬場のおつかいはソリをひいて行っていた。
“スウェット族”と呼ばれる集団もいた。ただただ全員でスウェットを着ているだけの若者の集団だったが行動目的はよくわからなかった。
滝川市は脚色なく本当に雪の多い街だった。吹雪いた次の日は雪で玄関がふさがってしまうことがありそんな時は二階から外に飛び降りて学校に行ったりしていた。
小学6年生の頃に吹雪でバスの運行が全部止まってしまったことがあった。腰あたりまで雪が積もっている猛吹雪のなか徒歩1時間かかる自宅まで帰らなければならなくなってしまった。途方にくれたがどこかにいられるような場所もなかったので気合いで帰ることにした。
すると道中で1つ上の先輩に出会った。といっても当時まだ中学1年生の男の子である。だが先輩は百恵ちゃんの前を体を揺らしながら歩いて道を作ってくれて違う方向なのに家まで送ってくれた。もしかしたらあの日死んでいたかも知れないとおもう。滝川市には変な人もいれば優しい人もいるのだ。
ただし十数年後その先輩が逮捕されたとニュースで知り、人間とはよくわからない生き物だなぁと百恵ちゃんは思い知らされる。