「不運」と戦う松本吉弘…新年初ランナーが見せた価値ある大逆転2着【熱論!Mリーグ】担当記者:山﨑和也

瀬戸熊にとってはまさに明けましておめでとうの一発となった。50000点を超えて大きくリード。今年も雷電にとって頼もしいエースだ。

最後はオーラスの模様をお伝えしたい。順位争いが熾烈であった。

トップは瀬戸熊がほぼ確定。温泉気分の親番といっていい。問題は2位の行方だ。微差で2位に藤崎、真後ろに村上がいて、少し離れてラス目に松本。

松本は瀬戸熊、藤崎とのリーチ争いでことごとく負け、倍満の親被りまでして踏んだり蹴ったりといった状況だった。

オーラスで点差が離れたトップのときは安心とはいえ意外と考えるものである。瀬戸熊は加点も狙えそうな配牌。

村上は苦しめだ。チャンタに向かうのが一番早そう。

1000点でもアガれば2位なので全速力でアガりに向かう。をポンして打。いくらリーチ超人とはいえ、ここはさすがに鳴いていく。

藤崎もが対子の手で特急券を持っている。このあと村上から出たをすぐにチーした。役牌を武器に1000点の収支を狙う。

松本は二人と違って打点が必要だ。手はまとまっているものの、満貫級の手になるにはもう少し足りない。

藤崎にが鳴けた。イーシャンテンにいる村上を追いかける。テンパイまではまだかかるが、村上と違って待ちの縛りがないのは大きい。

自転車で駆け回る両者をポルシェで眺めていたのが瀬戸熊だ。平和ドラ3の好形イーシャンテン。局後の瀬戸熊のインタビューでは、松本の現物でテンパイにならない限りではリーチにいっていたとのこと。リーチがかかったら藤崎と村上がどう立ち回っていたのかも見てみたかった。

瀬戸熊と違って苦しい立場にいたのは松本だ。を持ってきて手が止まる。普通は両面ターツを優先してを落とすのだが、藤崎はペンを、村上はをポンしているのだ。よって役牌のバックが考えられる。どっちも場には見えていない。

両面ターツを払うという選択肢もあるほどの状況だった。しかしアガりを目指すならやはり字牌を切って勝負してみたいところ。か。

松本は切りを選んだ。

仮にを切っていたら藤崎の手が進んでいただろう。偶然にもすり抜けた格好だ。

一歩抜け出たのは村上。チャンタ待ちのテンパイ。場には1枚しか切れていない。

と、そこに松本もを引いた。待ちのリーチをかける。見事な手組みだったがよく見るとリーチドラ1の手なのだ。一発以外だと村上と藤崎からの出アガりでもラス目のままかもしれないのである。それを承知でも行くしかなかった。

そんな松本に麻雀の神様が最後に微笑んだ。渾身の一発ツモ裏1。まさにこれしかないといった満貫で、松本が大逆転の2位につけた。

オーラスを迎えた時点では思わず「また不運にも……」と頭をよぎったが、苦労に苦労を重ねての2位であった。新年幕開けからこんなドラマチックな試合になるとは。アガった直後の松本は駅伝を走り終えた選手のように苦しげな様子だった。

まさかの4着になったのは村上。藤崎との100点差が大きく響いた。

チームのポイントゲッターを持ってしてもこの悪い流れは止められなかった。

2020年最初のトップを飾ったのは瀬戸熊。勝負強さは今年も健在だ。インタビューでのお決まりのポーズもすっかり慣れてきたように映った。

それにしても面白い試合だった。筆者は今年も可能な限り見続けようと思う。選手たちの妙技を少しでも目にしたい。

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