それでも、打ち手にできることはそれしかないのだ。
園田もまた、丁寧に打ち出していく。
私が目を見開いたのは、4巡目のムダヅモだった。
――あの園田が祈っている。
マナーに厳しく、常に一定の所作で麻雀を打つ、あの園田が、どれだけ気持ちを込めても変わることのないツモ牌に祈りを捧げているのだ。
初代王者であり、結果を出すことが最大のファンサービスと謳うドリブンズが、道半ばで、もうここまで追い込まれている。
園田も、ツモ牌が変わることがないということは分かっていても、溢れ出る感情は抑え込むことができないのだろう。
卓内で園田がここまで感情をあらわにしたのを、私は初めて見た。
その祈りが天に通じたのか
10巡目に園田の手牌はここまで進んでいた。
すぐテンパイしそうな手牌だが、なかなかテンパイすることができない。
そうこうしているうちに、がポンされ、高宮からリーチが入る。
そのリーチに天を仰ぐ園田の姿をカメラは捉えていた。
絶体絶命。
その後、仕掛けた勝又の押しにも挟まれ、園田とは思えないほど一巡一巡ゆっくりと、慎重に牌を選んでいく。
手牌はいつの間にかこうなっていた。
浮いている牌は全部通っておらず、テンパイすらも怪しい。
その一方で高宮のリーチだけでなく、仕掛けた勝又もほぼテンパイと見てよい状況。
「与えられた状況で最善を」というのなら、高宮のアガリでの3着は妥協しつつ、勝又のアガリは避けたい。テンパイが取れれば上等、という場面。
「悔しいと言うより、悲しいですね」
ついその言葉を思い出す。
されるがまま。ドリブンズの現状を体現しているような手牌を、園田が虚しく見つめる。
祈りは虚しく…
勝又のアガリで、園田はラスに落ちて第二試合は終了した。
チームランキングは
こうなった。4連勝のセガサミーフェニックスが大きくポイントを伸ばして2位に浮上。
ドリブンズは、年明けもダッシュに失敗し負債を増やした。
ただ、選手もファンもまだ誰も諦めていない。
そもそもドリブンズは、昨年のファイナルの24試合で598.8ポイントを稼ぎ出し、ぶっちぎりで優勝した王者だ。今回はまだ36試合残っていて、展開次第では300ポイントくらいでセミファイナル進出ボーダーにたどり着けるかもしれない。
雀界の盟主として、初代王者として、「与えられた材料」と向き合わなくてはならない。
私もドリブンズの復権を祈っている。
麻雀ブロガー。フリー雀荘メンバー、麻雀プロを経て、ネット麻雀天鳳の人気プレーヤーに。著書に「ゼロ秒思考の麻雀」。現在「近代麻雀」で戦術特集記事を連載中。note「ZEROが麻雀人生をかけて取り組む定期マガジン」、YouTubeチャンネル「ZERO麻雀ch」