
高宮が選んだのは、

だった。上家の沢崎は
と
を切っていて
は中スジだ。二段目に濃い牌を連続で手出ししてきた沢崎を警戒し、かつ、ドラ
を使うことで高打点のタンヤオを狙った、攻守兼用の一打だ。
押せ押せで行くならここは打という選択がある。ピンズのイーペーコーやピンフを活かしてハネマン以上が狙える。そうしなかったのは、
を沢崎に打たないためだ。
ややいつもより守備にウエイトを置いた高宮の選択だった。

この局、高宮はテンパイしたときにを勝負し、沢崎との二軒テンパイに持ち込んだ。
次の南1局4本場、7巡目の高宮、

ここで、

を切った。場にはピンズがほとんど見えていない。
の方が明らかに安全そうなので、手に
をとどめて危険な
を先打ちした格好だ。
私は思った。
「今日、高宮は守備を強く意識して打っているのではないだろうか?」
『淑女なベルセルク』のニックネームをもつ高宮。ベルセルクは別の読み方ではバーサーカー、つまりは狂戦士。その名の通り、怒涛の攻めが高宮の持ち味である。その反面、真っすぐ攻めた結果、手痛い放銃をしてしまうこともあった。
だが前局、沢崎に対応した打。そしてここでの打
。
明らかに高宮は『受け』を意識しながら手牌を進めている。
ふと、チームメイトの寿人が以前解説で話していたセリフが、私の頭に浮かんだ。

「備えは必要ですから」
リーグ戦も佳境に入った今、高宮はチームのために、南場に入ってからは特に避けられる放銃を避けるべく、備えながら手を進めているに違いない。
今日のベルセルクは右手には剣を、そして左手には盾を持っている。
警戒しながら手をすすめる高宮。に続いて、

を引き入れて、12巡目にはイーシャンテンに。

そして、ついにテンパイが入る。234の三色だ。

最終形ならば残りツモ2回でも、気高き女騎士は盾を置き、リーチという剣を抜く。

多井に仕掛けが入り、高宮最後のツモは、

だ!
リーチツモ三色同順。2400-4400のツモアガリで高宮はトップへと躍り出た。
そして、
南2局

南3局

と、続けて多井のリーチに対してガッチリと守りを固め、微差トップ目のままオーラスを迎えることとなった。
テーマ3
焦点の一局
なんとしても逃げ切りたい高宮。3巡目に、

を引いて、

打。
引きを見据えた良い一打だ。
次巡、

を持ってきて、

打。タンヤオを色濃く見てすすめる。

アガリトップへの道を模索する高宮を横目に、

多井にテンパイが入った。どうする。
