トイレに走り
前髪が揺れる
一牌の後先を制した
仲林圭のオーラス
文・ZERO / 沖中祐也【火曜担当ライター】2024年3月5日
過去5年間の記憶にない、異例のデッドヒートだ。
下位4チームが生き残りをかけて60pt内にひしめく大混戦。
泣いても笑ってもあと10数試合で3チームが姿を消すことになる。
第1試合
北家:仲林圭
U-NEXTパイレーツ
Mリーグにはトイレボタンがあるという。
画像ではわかりにくいかもしれないが…
サイドテーブルのドリンクの隣においてある、店員呼び出しボタンのような形状のものがそれだと思う。
オーラスに入る前、仲林はトイレボタンを押した。
そして画面が実況席に移ると、仲林は席を立ったのだ。
他の誰かも席を立つかな… と思ったら自分だけだったので焦った。
特に勝又の方を見ると
(あと1局で終わるかもしれないこのタイミングで休憩ですか)
という表情で、無言のプレッシャーをかけてくる。
仲林は焦った。そして走った。
全国のMリーグファンとケンジ・カツマタの機嫌を損ねないように、最速で往復しなくてはならない。アウト・イン・アウトを駆使し、コーナーをギリギリまで攻めるその姿は往年のアイルトン・セナを彷彿とさせるようだ。
走りながら、仲林はこの半荘を振り返っていた。
(あの放銃はどうだったかな)
その局面とは東場の親番でのこの場面。
両面()×両面()の形ができている絶好のイーシャンテンで、浮いている牌をどう処理するかという問題。
仲林はを切った。
は対面の本田に現物だが、は全員にワンチャンス(が3枚見えている)なので、ごく普通の選択に見える。
ただ仲林は状況的にも雀風的にも日向のリーチ確率よりも本田のリーチ確率の方が高いとは感じていた。
実際に手負いの獅子である
本田からリーチが入る。
仲林は即座にテンパイし、残してしまったを切ってリーチを打つと…
本田の手牌が倒される。
ミスとも言えないような残し。
ただ本人はを切る選択もかすかによぎっただけに後悔が残ったのだ。
その後悔となにかをトイレに流し、またしても卓へとダッシュで戻ったのである。
オーラス、点棒状況は以下。
2回のアガリを守った日向がトップ目で、勝又と仲林がそれを追い、本田は1人遅れた格好。