神回を超える悪魔回!
壮絶な騙し合い対局を
大逆転劇で滝沢和典が制す
文・山﨑和也【月曜担当ライター】2020年10月19日
麻雀は4人で打つゲームである。4人が様々な思考を巡らせ、1牌1牌で状況が大きく動く。しかし1半荘の中で4人全員が存在感を放つことができるかというと、それは意外に少なかったりする。もしそうなれば、それは神回といわれるだろう。
本記事では2戦目の模様をお送りする。技巧派の4人が集結し、いかにも何かやってくれそうな面々だ。この4人に共通するのはまだトップを獲得してないことである。誰が初トップを飾り、不調を脱することができるのか。
第2試合
南家 石橋伸洋(U-NEXT Pirates)
東1局。まずリードを奪ったのは園田だった。上図から打で先制リーチ。
これに振り込んだのは滝沢だった。自分も七対子のテンパイが入ったことで、を曲げてドラ単騎の勝負。積極的な一打だったが、これは実らなかった。園田が12000点のリードを奪う。
おいおいこれだけかよと思われた読者も多いかもしれない。申し訳ない。この第二試合は見どころが多すぎて、文量の都合上、泣く泣くカットしたシーンだらけなのである。
このあとも園田が加点してリードを広げていった。このままワンサイドゲームかと思いきや、場の空気を変えた男がいた。
東2局。
親の石橋の手はこちら。カンが埋まってテンパイ。ここはを切って12000のリーチに持ち込み、あとは引けるか勝負といった塩梅が普通だろう。
!?!?
筆者は一瞬の困惑のあと、「うわっ出た!」と叫んでしまった。衝撃の切りリーチである。
打点を7700に下げる強烈な一着。を切ることでその周辺の待ちと見られないようにする狙いだ。仮に捨て牌にやが切られたら相当危ない。
「これは……見なきゃよかった。これやられると困るんですよぉ」と解説の内川幸太郎プロも苦笑する。石橋得意の黒いデジタルが現れたのだ。このインパクトある一打は長いリーグ戦を戦ううえで後々に効いてくるかもしれない。「石橋はこういうこともするんだぞ」と。
恐れずに立ち向かったのはまたしても滝沢。は通っていない筋だがスッと押していく。自身は七対子のイーシャンテン。
また、園田にもテンパイが入っていた。滝沢の押しも見てか、少々の間を置いてテンパイを維持。ただ、よく見ると自身の河にを切っているためフリテンである。あまり頼れる待ちとはいえない。
石橋がを暗槓して再び12000点の手に戻した。巡目はもうわずか。
ド終盤でテンパイの園田にが入った。これはリーチ宣言牌の筋だが結構危ない。を切ってのカン待ちは筋引っ掛けの常套手段だからだ。が場に1枚しか見えておらず、残っている通る筋が少ないほど危なそうに見える。
しかし園田は少考の末に押していった。テンパイを取りきる価値のほうが高いと見ての選択だろう。これは切りリーチとは違ったベクトルで驚いた。このナイスファイトな姿勢を見て、筆者は園田の勝ちを予感した。
結果は石橋と園田の2人テンパイで流局。石橋の手が開かれて……
よくないものを見てしまったかのように目を伏せる園田と
(うわっ危ねっ)と言いたげな表情の滝沢。ちなみに滝沢はを打ち出そうかと迷ったそうで、紙一重で耐えたと後に語る。これが滝沢に火をつけたか、今までとは違った打ち回しを見せた。
東2局1本場。
滝沢の手はこちら。
形がまとまりつつあるものの、混一色までは遠く、を鳴いて1000点の手に見える。それでは物足りないと見るなら七対子だろうか。滝沢はすでにこの記事内だけでも2回も七対子を目指している。
白鳥から出たをすかさずポン。
石橋から出たをチー。2副露してイーシャンテン。人が人なら至極自然だが、これを門前重視の滝沢がやったというのがポイントである。「見たことがない」と内川プロも驚いた。何か根拠があるはずと周りは思うわけだが、すると真っ先に考えられるのが、ドラのが対子か暗刻のケースである。河の濃さからテンパイでもおかしくなさそうだ。
実際は1000点の手なのだが、これが相手の足をうまく止めることに成功した。石橋は終盤でテンパイが入ったものの、場に1枚も切られていないを切るわけにいかず、打。