数字を超えて、
海賊団が全てを搔っ攫う
文・越野智紀【金曜担当ライター】2022年3月11日
【第1試合】
東家:小林剛(U-NEXT Pirates)
南家:堀慎吾(KADOKAWAサクラナイツ)
西家:高宮まり(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
北家:萩原聖人(TEAM RAIDEN / 雷電)
Mリーグ2021(3/11第1試合)
「誰が2位の人の名前を覚えているのか?」
シーズン終盤に泥沼化したタイトル争いを擁護する人の言い分です。
他にも「親が子を守る当然の行為だ」なんて例える言葉を聞いたこともあります。
選手に沢村賞や三冠王等の冠が付けば引退後の活動にも幅が広がることでしょう。
それまでのシーズンの活躍でタイトル争いに有利な状況が作れていたわけですから、勝負を避ける選択でタイトル奪取率が上がるなら当然の権利だという主張も理解はできます。
ただ、熱い勝負を観る機会を奪われてしまった観戦者にとっては興醒めな理屈です。
時が流れたら逃げた記憶は薄れていき1位の記録だけが強く残ると考えられていることも事実なのかもしれませんが、少し残念な気持ちが湧いてきます。
数年に1度こういった議論が起き、当時タイトル争いをした人がインタビューで「勝負して欲しかったが気持ちもわかる」といった回答で大抵は何も変わらずに来シーズンに進んでいくのが悲しい現実です。
発足4年目でシーズン終盤の個人タイトル争いの文化がまだ定まっていない状態のMリーグでしたが、レギュラーシーズン最終戦の前日にKADOKAWAサクラナイツの森井監督が一発仕掛けてきました。
第1試合・第2試合の予告先発です。
KADOKAWAサクラナイツは現在チーム3位で堀選手が個人7位、沢崎選手は個人2位。
前門と後門に2枚の虎を配置してきました。
これはU-NEXT Piratesと個人1位の瑞原選手に対しての宣戦布告と見て間違いないでしょう。
瑞原選手と沢崎選手の差は12.8ポイント。
全打席敬遠したくてもバットが届くところにボールを投げないといけないのが麻雀です。
U-NEXT Piratesの選択肢としては
①2試合目に瑞原選手を出して沢崎選手と直接対決。
②1試合目に瑞原選手を出して連対したら結果待ち。連対を外せば連戦して直接対決。
③両試合とも瑞原選手を出さず。
主にこの3つだと思います。
今シーズン一度も対戦の無かった瑞原選手と沢崎選手が最終戦での直接対決でMVP争いに終止符を打つという①はストーリー的な美しさがありますが、これだと五分五分の勝負となり瑞原選手の有利な状況が活かされていないようにも見えます。
②は一戦全力の瑞原選手は今までMリーグで同日連戦した経験がゼロなので選択肢から消えそうです。
③のお祈りタイムは沢崎選手の72%の連対率を考えると選びづらく見えますが、+12.8ポイントを超えた試合だけを取り出すと40%と確率は一気に低下しています。
数字を大切にするU-NEXT Piratesのチームカラー的には瑞原選手を温存する③を選択してくると予想していたし、その選択肢も面白いと思っていましたが
虎穴に入らずんば虎子を得ずと、瑞原選手の志願に木下監督が応える形で直接対決を選択。
1戦目の小林選手でチームポイントを稼ぎ、2戦目の瑞原選手が沢崎選手を退治する。
海賊団の血が目覚め、レギュラーシーズン1位通過とMVPの全てを奪う作戦に打って出ました。
小林選手と堀選手の目指すところは1戦目にプラスしてチーム4位以上を安泰なものにし、2戦目の選手が伸び伸びと打てる状況でバトンを渡すこと。
東1局。
親番の堀選手は愚形2つの3シャンテンの配牌。
123の三色の目を残してから切ります。
との切り順の違いはは縦にも横にも使える牌というよりも、他家が重なる前にを処理することの意味が大きそうです。
これに対して小林選手の配牌は
ドラのが暗刻でターツも余っているリャンシャンテン。
副露率が高い小林選手なら序盤から仕掛けても警戒されづらく、役牌ドラ暗刻の価値が他の選手よりも高くなっています。
さっそくをポンしてイーシャンテンに進むと