勝ちを意識した途端、手が震えだした
連盟の総大将・HIRO柴田の
とてつもなく長いオーラス
2023年7月10日 予選2ndステージE卓 文・ZERO / 沖中祐也
昨日、筆者はとあるタイトル戦に参加していた。
うだるような暑さの中、汗だくになりながら会場まで足を運び、一日をかけて6半荘を打ち切る。
この日は幸運にも勝利条件を満たし、次の対局に進むことができたのだが、いつかは他の大半の参加者と同様に負けるときがくるだろう。
年間を通じて行われるリーグ戦の他に、こうして10近いタイトル戦にも参加し、昨年はその全てで負けた。
仮に優勝できたとしても、確率に見合わない賞金を手にし、業界内で少し話題になるだけで次の週にはもう忘れられているだろう。麻雀プロたちは、何十年もの間、ずっとこんなことを繰り返してきた。
それで良い。麻雀が好きだから、そしてもっと強くなりたいからプロになったのだから。
注目されない個人の戦いだったとしても、少なくとも自分の中ではドラマがあり、そこに痺れている。
心から勝ちたいと思ってるし、それが大きな価値を感じている証拠なのだ。
そんな中で5年前、Mリーグが麻雀界を大きく変えた。
光の当たる世界と、そして影を生み出したのである。
Mトーナメントは、光の当たらない者が光の当たっている者へ魂をぶつける場所なのではないか。
Mトーナメント 2023
7/10(月) 予選2ndステージ E卓
【対局者】
HIRO柴田
日本プロ麻雀連盟
どうしても私の目は光の当たらない者──HIRO柴田(以下柴田)に注がれることになる。
柴田は連盟の最上タイトルである鳳凰位であり、先日行われたドラフトでも「なぜ選ばれなかったのか?」と話題になった一人でもある。
この舞台をどういう気持ちで臨んでいるのだろうか。
柴田は戦前
「欲を殺さないと、運が逃げる」
と語っていた。
そのまま受け取るとただのオカルトだが、とても共感できるのはなぜだろう。
1試合目
松ヶ瀬が先行する形で迎えた東4局、柴田は最後のツモを残してテンパイを果たした。
松ヶ瀬(下家)から先制リーチを受けていてもも通っていないがワンチャンス。
どちらに受けるにせよ、リーチを打つものと思われる。
なぜならMトーナメントはここまで行われた16トーナメントで、1試合目トップだった者は全員勝ち抜いているのだ。トップが有利なレギュレーションとはいえ、ここまで偏るとは正直思っていなかった。
だからこそアガる時は打点を高めておきたい。
だが、柴田は考える。
そりゃリーチして松ヶ瀬から直撃できればトップはグッと近づく。
だがそれは勝ち上がり確率を最大に高める行為ではなく──
欲なのではないか。
そう感じた柴田はを縦においた。
リーチしたいのは山々だが、放銃したらそれこそ相手に決定打を与えてしまう。
次の巡目にオリやスライドの選択を残しておきたいし、ダマなら他家からひょっこり出ることもある。