「待たせたな!」其は
ヒーローか、ラスボスか……
最速最強:多井隆晴、
目指す頂きは一つ
2023年7月15日 FINAL STAGE B卓 文・渡邉浩史郎
「麻雀はルールに対応できるか否かが全て」
よく言われることだが、まさにその通りである。
裏ドラはあるか、赤はあるか、順位ウマは、オカは、完全順位制か、リーグ戦か、トーナメントか、連続〇対戦の成績か……ルールの組み合わせを変えるだけで、最適と思われる戦術は大きく変化する。
このMトナメについていえば、これまで一戦目トップ者が全員通過を果たしている。これはなぜか。
大きいのはまず順位点。上から+50、+10、-10、-30ということを加味すれば、0着・2着・3着・4着と考えるのがいいかもしれない。この考えの元、二戦行って着順の合計が4以下であればほぼ通過である。順位点で大幅なリードを得られるからだ。
具体的に素点を抜きにして、一戦目トップが順位点で並ぶケースは
1→4 +20
2→2 +20
3→1 +40
4→3 -40
と
1→4 +20
2→2 +20
3→3 -20
4→1 +20
この二点のみに絞られる。仮にこの着順になったとしても素点で勝つパターンが存在すること、二戦目はそれぞれのゴールが明確なため条件を満たしているものとそうでないものとでゲームメイクがしやすい(例えばラス親が条件を満たしていれば連荘がなく、素点を大きく減らすリスクが少ない等)を考えれば一戦目トップの優位性がたやすく理解できるだろう。
ここからまず考えられることは、「一戦目は全力でトップを取りに行く、そして二戦目はラス回避もしくは他家の着順操作を行う」という戦略だろう。
当然最速最強のこの男がそれをわかっていないはずもなく……
一戦目
【東2局1本場】
流局を挟んでの多井の手牌、ドラドラ赤の勝負手。普段でさえ押す手だが、この一戦目絶対トップと考えればそんじょそこらのリーチには降りないところだろう。
実際に、浅井のターツ落としを含んだ先制リーチが入っても……
、、そして当たり牌のと押し切った。
結果こそ2600は2900の放銃になったがまずは多井のスタンスがわかる立ち上がりとなった。
その後は多井に和了りがないまま、瑠美のハネマンツモで南入。「東場は自由演技、南場は規定演技」、残り局数が少なくなってきた中、ここでも多井の勝ち上がり策の一端が如実に表れる。
【南1局】
多井の配牌がこちら。トップとは20000点近く離れていることを考えると、まずは一枚目から仕掛けて躱し……とはいかないところだろう。
実際に一枚目のは鳴かず。
前巡よりも自風のを残しているのは打点を見ている証左といえるだろう。役役ドラをツモってのテンパネ1300・2600や赤を引いてのマンガン。何なら役役ホンイツや役役トイトイまでの変化まで見ているかもしれない。
多井の手はほとんど進まないまま、二枚目のが出た。これは……
いつもと変わらない表情で、ポンと発声をした。
普段のリーグ戦形式の多井であれば鳴かずに守備駒としていてもおかしくない牌姿と打点。
それでも鳴いたのはやはりこの半荘トップを取るための選択だろう。他家にドラまみれの手牌を成就される前に、ギリギリ和了り切れそうとの判断だ。