松ヶ瀬隆弥を襲った悲劇──
追い詰められた中で見せた
繊細な一打
文・江崎しんのすけ【月曜担当ライター】2023年12月4日
第2試合
東家:松ヶ瀬隆弥(EX風林火山)
南家:滝沢和典 (KONAMI麻雀格闘倶楽部)
西家:菅原千瑛 (BEAST Japanext)
北家:渡辺太 (赤坂ドリブンズ)
Mリーグ2023レギュラーシーズン90戦目。
連投となった松ヶ瀬は手痛いラスを引いた。
この試合、松ヶ瀬にはよく勝負手が入っていた。
総局数16局と長時間の試合だったが、松ヶ瀬がかけたリーチの回数は8回。しかしアガリはたったの1回だった。
リーチは8回だが、鳴いたテンパイからのめくり合いに勝てなかった局が3回あったので、松ヶ瀬は11回のめくり合いがあって1回しかアガリを手にすることができなかったことになる。
「プロ人生で一番ツラい日だったかもしれない」
試合後のインタビューで松ヶ瀬はそう答えた。
1戦目のラスと合わせ1日で165ポイントを失ったことを考えると、Mリーグの登板日の中で一番ツラい日だったことは間違いないだろう。
そして放銃は4回とこれもまた多い。
その内3回はリーチ後のめくり合いからの放銃だった。
中には松ヶ瀬の待ちが山に5枚、アガった太の待ちが山に1枚しかいないところから最後の1枚を松ヶ瀬が掴み放銃するシーンもあった。
これまで松ヶ瀬がMリーグで活躍していた姿を知る人には、にわかに信じがたいような試合だと思う。
放銃4回の内、1回だけ松ヶ瀬は攻めていない状態からの放銃、いわゆるオリ打ちをした局面があった。
それは東3局2本場のこと。
4巡目に親番の菅原から先制リーチが入る。
ここまで、菅原は超弩級のアガリを連発していた。
東2局3本場にはドラ2七対子の単騎をリーチしてでツモアガリ。4000-8000を決めると、続き東3局の親番では6,000オールを2連続で決め、ラス目から6万点オーバーのトップ目に立つ。
そして迎えた3本場で4巡目リーチ。
同卓者からすれば「もう勘弁してくれ」と言いたくなるような展開だと思う。
菅原の待ちは。がドラなのでをツモれば4,000オールスタートの手。
松ヶ瀬の手は形の良いイーシャンテンになっていた。
しかし…
次巡、菅原の当たり牌であるを引いてくる。
松ヶ瀬の手には全く必要ない牌だ。
少考に入る松ヶ瀬。
松ヶ瀬はを止め、現物のを打った。
この後テンパイするとして、最低ドラのと2筋にかかるを通さなければいけない。早いリーチで現物も少ないため、押しの判断になる人も多そうだが、松ヶ瀬の基準ではギリギリオリに傾いたようだった。
異名の通り繊細な選択となったが、功を奏し親リーチへの放銃を回避する。この後は手を組むことは無く、現物やノーチャンスかつ複数枚持っている牌など、可能な限り通りそうな牌のみを切っていく。
親リーチに対して完全撤退を選んだ松ヶ瀬だったが、逆にテンパイまでたどり着き押し返したのが太だった。
幸いにも切る牌がリーチの現物、筋の牌となっており、大きな危険を冒すことなく手を進めていく。
6巡目、太はツモってきたをそのままツモ切った。
自身の目からが4枚見えており、の場況が非常に良い。
リャンメンを固定しつつ、仮に・などを引けばソーズのカンチャンを払っていくこともできる。
しかしこの選択について、試合後の検討配信にて太は「ミスだった」と話していた。