流した涙はABEMASへの想い
日向藍子が挑んだ初の最終日
文・ZERO / 沖中祐也【火曜担当ライター】2024年4月30日
レギュラーシーズンをギリギリで生き残った2チームの明暗がくっきり別れた。
その1チームである風林火山は烈火の如くランキングを駆け上がり、もう1チームであるABEMASは
敗退の危機に瀕していた。
ファイナルに進出するためには残り2試合で273.6pt差を埋める必要がある。
ただでさえ絶望的なポイント差だが、他チームの結託を考慮にいれると、もう髪の毛一本ほどの希望も残されていないのではないか。
これまでのABEMASは、このようなセミファイナルもしくはファイナルの条件戦においては必ず多井が登板してきた。
しかし今夜、卓に赴いたのは…
第1試合
東家:仲林圭
U-NEXTパイレーツ
2位 +443.3pt
実況:小林未沙
解説:土田浩翔
日向藍子だった。
ABEMASヒストリー①
いつもニコニコの笑顔で元気が良く、陽キャが服を着て歩いているようなイメージの日向だが、実際は繊細で打たれ弱い一面を持っている。
2019年、日向はABEMASの4人目の選手として指名を受けた。
しかし当時の日向は、結婚し出産した直後であり、麻雀どころではなかったと推察する。
折しも、ABEMASは初年度に松本・白鳥が思ったような活躍ができず、来シーズンこそはタカハルを支えるぞと気合を入れ直していた時期である。
子育てにMリーグ… 激変する生活をこなしていくのに精一杯の日向と、次こそはと燃えるチームメート。歪みが生じ、衝突するのは必然だった。
トップをとっても褒めてくれない。言い方が悪い。
些細なことで、チームはぶつかり合い、傷ついていく。
コメント欄やSNSでの中傷などにもメンタルがすり減らされた日向は「私はこのチームにいていいのか」と思い悩むほどに落ち込んだという。
ひなたんスマイルの裏で、涙を流していたのである。
そんな折、緩衝材となったのが白鳥である。
(追憶のM・日向藍子編より/Ⓒしおざき忍・ZERO)
弱き者の気持ちに寄り添うことができる白鳥に、日向は悩みを打ち明けた。
時に一晩中通話で語り合ったという。
そしてABEMASの2年目は3位に終わった。
転機の1つになったのは3年目のファイナル最終日。
控室に戻ってきた多井が嗚咽を漏らして泣いた。
ABEMASはこの年も3位に敗れたのだ。
むせび泣く多井を見て、3人は痛感した。
ここまでタカハルにチームの責任を背負わせてしまっていたのか、と。
同時に意識が変わった。
チームとして、個人として、もっと強くならなきゃいけない、と。
東3局、日向はこのをツモ切った。
役牌が2つの手をもらって安くすませていてはトップは取れない。