チームヘラクレスの新人、長尾景は、今シーズンめざましい活躍を見せていた。
初陣となった第4節では監督陣2人を相手に2着を持ち帰る大健闘を見せ。
続く第5節では見事トップを獲得し、大きくプラスポイントを伸ばすことに成功。
ここまで盤石の戦いを見せているヘラクレスにとって、欠かせない一員となっていた。
そんな、順調な結果を残し続けている長尾だが、実は初陣となった第4節のインタビューで、とても印象に残っているシーンがある。
「天開さん、俺悔しいよ」
それは、対局後のインタビューが始まってすぐ。
長尾が最初に口にした感情だった。
結果から見れば、新人枠の長尾が、監督2人と神域リーグ3年目且つ魂天の咲乃もこを相手に2着という結果は、手放しに喜んでも良いものだ。
実際、長尾も試合が終わった瞬間は、喜びの感情もあった。
だが、対局が終わって、熱が少し冷めて。
冷静に対局を思い返した時に、「俺もっと打てたよな」と後悔の念に駆られたのだ。
この時、私は長尾景という選手に、底知れない伸びしろを見た。
麻雀というゲームは、内容と結果が必ずしも比例しない。
だからこそこの時、結果ではなく、内容を振り返って「悔しい」と思えた長尾景に、はっきりと期待感を持った。
この選手は、もっともっと強くなるんじゃないか、と。
第10節 第1試合
東家 える (チームアキレス)
南家 長尾景 (チームヘラクレス)
西家 朝陽にいな(チームアトラス)
北家 桜凛月 (チームゼウス)
東1局
長尾がドラのを持ってきて、切り。
これで引きでのメンツ手の他に、引きでのツモ三暗刻、引きでのチートイツを見る事ができる。
よもやのドラの引きは、四暗刻まで伸びることがある大物手だ。
狙いの1つである、を引き入れてリーチ敢行。
待ちは、高目のツモなら8000点から。これは間違いなくリーチで良いだろう。
そこに追い付いたのが、親番のえるだった。
を引き入れて待ち。は長尾の現物待ちだが、関係ない。リャンメン待ちなら十分と見て、リーチへ。
東1局から、大物手がぶつかり合う。
これを制したのは、えるだった。長尾からを捉えて12000の先制パンチ。
「長尾君新キャラ引いた~? 新キャラ引いてんのよこっちは! 」
……雀魂に課金したからといって、麻雀への影響は一切無いと、明記しておく。
冗談は置いておいて、かつて悔しい想いをしたのは、えるも同じ。
負けて良い人など、この舞台に1人もいない。
東2局
点棒を失うスタートとなった長尾だったが、全く気持ちは切れていなかった。
流局を挟んだ東2局の親番、桜からリーチを受けるも、自身の手が良いため果敢に攻め込む。
まずは通っていないをプッシュ。
怖いも通した後、を持ってきて選択。
ここで、長尾が選んだのは、切りだった。
良い選択だと思う。
桜のリーチにはが通っていて、の形では当たらない。
36の形では当たるが、それは長尾自身がを3枚持っているため、そもそもと持っている確率が下がっている。
567三色だけ消えてしまうが、そもそも手牌は赤2枚で打点十分なため、三色にこだわり過ぎる必要はない。
を引いて追い付いた……!
この形なら文句無し。での追いかけリーチを敢行。
アガればどんな形であれ12000からの超勝負手だ。