愚形を制し読みと心中。
最後は意地のぶつかり合い。
文・小林正和【火曜臨時ライター】2023年11月14日
待ち行く人も厚めのニットや長めのコートを身にまとう姿が目立ち、季節の移ろいを感じる此の頃。何なら“クリスマスケーキ”や“おせち”の予約開始のポップを貼り出す店もチラホラと、早すぎる月日の流れに驚きを隠せない。
Mリーグ2023-24も開幕から早2ヶ月が経過し、レギュラーシーズンも1/3が終了。序盤から中盤戦へと戦いの色合いも変化する頃合いとなってきた。
そして特に今年は新規チーム参戦や選手入れ替えもあり、新たな風が最高峰のステージに吹き渡る。
“新陳代謝”
“古いものが新しいものに次々と入れ替わる事”
正に今シーズンを象徴する言葉ではあるが、気をつけたいのが古いものを排除するという事ではない所である。
Mリーグから退いた選手の中にはチーム監督や解説者として携わる者もいれば、印象的だったのが先週の対局後インタビューで語った滝沢和典のコメント。
「今日は前原さんの戦法を踏まえて打ちましたね。」
こうして古き良きものを受け継ぎ、現代に融合させ価値を高めていく。
本日の対局も、それを体現するメンバーが揃った。
第1回戦
東家:瀬戸熊直樹(TEAM RAIDEN / 雷電)
南家:鈴木たろう(赤坂ドリブンズ)
西家:仲林圭(U-NEXT Pirates)
北家:堀慎吾(KADOKAWAサクラナイツ)
たろうは団体を移籍はしたが、二人とも過去に自団体において数えきれない程のタイトルを戴冠。今現在も最前線で戦い続けている。
一方で、ここ最近お互いに相まって凌ぎあっているのが堀慎吾と仲林圭。
先日開催された日本プロ麻雀協会主催の雀王決定戦では、二人の直接対決が行われた。その時は逆転で仲林が堀を捲り、初優勝を飾っている。ちなみに雀王は過去にたろうが4回勝ち取っており、今回の対戦カードはリベンジ・新旧対決の構図として見るのも面白いだろう。
実績十分の選手が揃ったこの試合。実にハイレベルなものとなった。
東1局
今シーズン、なかなか波に乗れないたろうがリーチ・ツモ・ドラ・裏と幸先の良い満貫ツモスタートとなった開局。
注目したいのは仲林7巡目の選択である。
牌姿だけ見ると、タンヤオや一盃口、最終形の強さを考慮してを切る人も多いのではないだろうか。
しかし、仲林の選択は
少しばかり時間を使うと空切り。イーシャンテンキープとした。
この選択について全体図から少し考察してみたいと思う。
まずは親の瀬戸熊のターツ払いに注目したい。
切り出しこそ大人しめではあるが、→の切り順である。もしシュンツ手の場合、タンヤオ牌である点やペンチャンからカンチャンターツになる点からも、よりの価値が高い。それにも関わらず、先にから手離すと言うことはある程度の形は整っていると予想できる。
そして一番の焦点は、堀の6巡目だろう。
タンピン系の捨て牌からというど真ん中の牌が余り、且つドラ切り。この巡目において既に煮詰まっていると言える。
こうして仲林は相手との距離感を測り、ここは速度重視と、堀に対して危険牌になり得る裏筋の処理にシフトチェンジしたのではないだろうか。
たまたまリーチ者はたろうとなったが、実際に瀬戸熊の手格好はスピード感はないものの十分にターツが足りており、堀に関してはが放銃牌になる可能性を秘めていた。
更にツモ切りではなく空切りとしたのも良い。
こうする事で他者にマンズの警戒度を高めさせ、誤情報を与える効果も期待できる。
こう言った相手からの見られ方を意識するのも仲林の特徴の一つなのだ。
例えば南1局1本場
↓のようなマンズの並べ方もそうである。
前巡に一番左側に置いてあったを空切りした後、その二つ飛ばしの所に収納。つまりのスライドを装っているのだ。こうしておく事で待ちが残った時に出アガリ率が上昇するというカラクリである。
こうした見えない光る選択肢もある中で、本日好調だったのがたろう。
東2局