一頭の雷獣
文・越野智紀【火曜担当ライター】2023年11月14日
第2回戦
東家:小林剛(U-NEXT Pirates)
南家:堀慎吾(KADOKAWAサクラナイツ)
西家:渡辺太(赤坂ドリブンズ)
北家:萩原聖人(TEAM RAIDEN / 雷電)
ちょうど1週間前。
前回出場した試合後のインタビューで
「ここまでウチのチームは誰かが連勝するとかはなく、良い感じにお互い補って補ってできている。今シーズンもまだ長いので誰かが倒れたら誰かが助ける…黒沢・瀬戸熊・本田・俺みたいな感じで最終的に上までいけたらいいなと思っています」
そう発言していた萩原選手。
この言葉、目を瞑り聞いてみると
「それは協力なんて甘っちょろいことじゃなく……一頭のライオンが四つに分かれて生きてけるかって言ってんだ!」
というカイジ…というか意志が伝わってきました。
そして本日の第2試合。
第1試合で深手を負った瀬戸熊選手からバトンを受け取った萩原選手は、先週発した言葉の意味を今ここで証明すると
四人の全てを胸に秘めて第2試合に臨みました。
開局からドラが2枚あるまずまずの配牌をもらった萩原選手。
まだ苦しいターツの部分も残っていましたが、が場に3枚切れでも期待薄と考えてくっつき要員のとはここでお別れします。
を引いて選択が裏目に出てしまいましたが、は現在一番弱いリャンメンターツに見えるので痛みはあまり感じていないはずです。
すぐにを2枚引いて二盃口のイーシャンテンとなると
萩原選手の選択はを残して切り。
を残してチンイツへの変化を残す選択もありましたが、場に1枚切れのペンターツが弱いのでや引きからの変化を残しました。
これはメンゼン重視の黒沢選手のような手順です。
そのまま変化することなくを引いて二盃口ドラ2のテンパイが入り
小林選手からがツモ切られて満貫のアガリで幸先の良いスタートを切りました。
次局、今度はあまり見栄えが良いとは言えなかった景色を
一変させるからの
ドラを愛し
ドラに愛された男のツモ。
苦しい部分が全て解消し、一直線に導かれるようなアガリ。
萩原選手は試合後に
「あのが(同じ待ちでテンパイをしていた小林選手の元へと)入れ替わっていただけで負けですからね。だからそこにいてくれたっていうのはラッキーでした」
そう1牌のズレで全ての結果が変わる麻雀というゲームの怖さを理解した上で、この試合で手にした流れの良さを謙虚に受け止めていました。
さらに続けてドラ単騎待ちの早いリーチも小林選手から討ち取り、満貫→ハネ満→満貫と3局連続の大きなアガリで完全に抜け出すと
今日も元気にリャンメンチーして愚形残りのバックを発動。
リーチを受ければを落として迂回し
色々引き戻して三色が見えてきたら、一瞬のテンパイでのアガリを期待して戦場に再び顔を出す。
危険な弾が飛んできたらすぐに撤退。
本田選手直伝のフラフラ打法で、リードしていてもサボらず参加してトップを奪いにいきました。
ここまで苦しい展開になっていた小林選手の麻雀哲学が見えたのが次局の選択で
太選手のリーチを受けてイーシャンテンで粘るもテンパイ出来ず。
誰も鳴くことも出来ないノーチャンス4枚見えの共通安全牌になっていたを切れば静かに自分の手番が終わるところ、少考に入った小林選手。
ベタ降り模様の親の堀選手に「ハイテイをズラしてください」とを捻り出しました。
どうせ太選手にツモられるなら堀選手に大きく親被りしてもらったほうが自身の3着になる確率が上がると考えるのが着順意識の強い人で、小林選手はと言えば素点意識が強いタイプ。
堀選手が多少親被りしたところで自身が3着に浮上する確率が微増なら、それによる価値なんて1ポイントも変わらないと。
それよりも満貫がハネマンになったりハネマンが倍満になったりしたことで損になる1ポイントを守ろうと、素点を大事にする選択をしました。
太選手と競っていた堀選手にとって、小林選手からの提案は渡りに船。
小林選手の期待に応えてハイテイをズラしましたが
結果はをツモられ、悲しみの「努力したものが必ず報われるとは限らん」現象が起きてしまいました。
このままでは終われないと、連闘権を行使してまで出場していた堀選手は
次局、ドラ赤赤の勝負手が入り集中力を高めていきます。
この手はリャンカン部分が残った場合、どちらの待ちを選択するかが重要案件です。
全体を見渡すと