西原理恵子 & 山崎一夫 ケチケチばあさんの小さな雀荘♪

ケチケチばあさんの
小さな雀荘経営

家業経営、支店経営、チェーン店経営。
店舗の経営形態をこの3つに分ける考え方があります。

家業経営というのは、1店舗を家族中心に経営し、あまり他人従業員を雇わないやりかた。
支店経営は、数店舗を店長以下他人従業員を雇って経営するやり方。

業績は店長の意欲と能力によって大きく左右されるそうです。

チェーン店経営は、一般的に10店舗以上を広範囲に経営するやり方で、店長の実力よりも、本部スタッフの実力が各店舗に反映されると言われています。

雀荘業界でも、最近はチェーン店経営が増えて来ましたが、かつては小規模な家業経営の店がほとんどでした。

私が通っていた小さなフリー雀荘は、経営者の一族郎党が働く大家族経営でした。

「あら山ちゃんいらっしゃい。早いわね。さっそく卓を立てましょうかねえ」

後期高齢者と思しき、エプロン姿のママが笑顔で迎えてくれました。

「じゃ、お父さんもとっとと卓に着いて。あらウチのバカ息子はどこに行ったのかしら」

客一人に対して、家族が総出でメンバーとして対応するという、当時でも珍しい店でした。

 

ママが冷蔵庫から麦茶を出してくれて、さっそく麻雀が始まりです。
無料の麦茶は自家製で、それ以外のドリンクは有料です。

本当はコーヒーを飲みたかったんだけど、インスタント・コーヒーが、あまりにも薄いのを思い出してやめました。

レートは伝統的なピンの1-3。箱テンで六千円。
当時のアルバイトの日当は、これよりも少ない時代です。

ママとお父さんの麻雀の成績は、あまり良くなさそうに見えました。
オーラスは、私と三十代の息子のKさんがトップ争いで、ママとお父さんがラス争いです。

「ママ、お父さんおはよう」

「いらっしゃいませ~」

常連のペンキ屋の大将の登場です。

「ロン、山ちゃん優勝おめでとうね」

ママが息子のKさんからアガってゲームが終了しました。
次のゲームは大将が入って、ママが抜けます。

「ママ、ラーメン作ってよ」

「あいよ」

大将が配牌を取りながら注文。

インスタント・ラーメンなのはいいとして、実は袋入りの麺の時点で、少し割って少くな目にしてお客さんに出すんです。

そのケチった短い麺を集めて、ママの食事にしてるのを目撃したことがあります。
出前のラーメンを頼むこともあるんですが、その時は割り箸を大量に持って来させてました。

ママとおとうさんは、夜は電車のあるうちに帰宅し、もし電車に遅れた場合は小一時間かけて歩いて帰ってました。

一方息子のKさんは、たいていタクシーです。

 

Kさんの言い分はこう。

「ママは麻雀で負けっぱなしなんだから、タクシー代をケチってもしょうがないだろう」

「何言ってんの。節約のおかげで店が持てたんだし、店があるおかげで、負けることもできるのよ」

ママから娘のヒモまで
大家族で働く

深夜は中年の娘さんカップルが店を切り盛りしていました。
どうやら正式の夫婦ではなく、男性はヒモだったみたい。

「ツカねーなー、またラスだよ。おい、タネ銭を回してくれ」

ヒモなのはしょうがないとしても、人前でこんなのはいけません。
娘さんが気の毒だし、何よりお客さんが居心地が悪くなってしまいます。

一方、娘さんは美人で愛想も良くて麻雀も強くて、お客さんには人気がありました。

ヒモにありがちなパターンらしいんですが、わざとダメ男の行動に出て、周りの男性に彼女にアプローチさせないようにするらしいです。

「ビール2本出してくれ。俺からみんなにオゴリだ」

「アンタビール代は?」

「ツケとけよ」

こんなビールを奢ってもらっても、あんまり美味しくなさそうです。

 

俺の女に近づくな作戦は効果アリですが、それはこの雀荘にも近づくな、になってしまいます。
ママがそれに気づいて、娘たちを叱ったようです。

やがて娘たち夫婦は店に出なくなり、ママの妹が深夜を見るようになりました。

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