完全にMリーガーを諦めたとしか思えないコラムを書いている!と話題のプロ雀士・仲林圭「指詰めろ事件」の真相
【仲林圭のゲスコラム】
VOL.3
なんとか3回目までこのコラムも続けることが出来た。
面白くなかったら即打ち切りと言う恐ろしいシステム
で、仲林は身を削って孤軍奮闘している。ちなみに私はAリーガーであるし、去年は最強戦ファイナルにも残り、一昨年は雀王決定戦にも残っている。このコラムを読んでいる人は知ってるかわからないが、一応麻雀だけは強い。しかもかなり強い。同卓した時は気をつけた方がよいだろう。他の部分は本当にゴミクズのような人間ではあるが、周りのみんなは笑って許してくれる。
この前、吉田光太プロと飲んでいる時に、光太さんがカッコよく、ためになる深イイ話をしていた。内容は全く覚えていないが、みんなシリアスな顔をしながら聞いていた。話も佳境になり、相変わらず光太さんカッコいいなぁと思っていたところで、吉田が噛んだ。吉田、締めで噛んだのだ。流石にツッコまないのは失礼だと思い、
「おいおい、光太さん、噛むぐらいなら芸人やめなよ」
そう言うと、ごめんって言って笑っていた。いい先輩だ。初めて会った時が21歳の時だったので、もう13年の付き合いになる。吉田も28歳で、今の温厚な吉田ではなく、ジャックナイフ吉田と呼ばれていた時代だ。また違うコラムで吉田プロの話を書こうとおもう。楽しみにしてくれ。
さて、今回お話しさせていただく事件は
「指詰めろ事件」
だ。「東大を出たけれど」で有名な須田良規プロが前にツイートしていた事件の真相を、今回は赤裸々に話そうと思う。
とある日、仲林は大久保にあったポンと言う雀荘に行った。須田プロが店長をしていた、「東大を出たけれど」のモデルとなった雀荘だ。当時はいろいろなプロが遊びに来ていた。武中兄弟や小倉さんなど、様々なプロが麻雀をしていた協会員にとっては聖地と言っていいお店だ。ちなみに客が8人いたのに、店長を含め全員ドラクエ9をやっていたため卓が立たないと言う珍事もあった。もちろんその甲斐あって潰れた。
ポンに入っていくと、メンバースリー入りで麻雀をしていた。協会の綱川プロと須田プロ、あと一人は忘れた。俺だって人は名乗り出てくれると助かる。
「すぐ案内できるから、待ち席でまってて」
当時、協会に入って2年目の仲林は須田プロに憧れを抱いていた。哀愁漂う文章で当時、若干の人気を出していた須田プロみたいな文章に憧れていた。今文章を書き始めてわかった。それは無理だ。哀愁を感じると言えば、
元嫁に浮気されて家を飛び出し、ムシャクシャして飲みまくって、酔っ払って風俗に行った帰り道に、なんでこんなことしてんだろうって言う顔をした時が一番哀愁漂っていただろう。
あんな趣(おもむき)のある文章など書けない。
待ち席で待っていた仲林は10分程度でご案内になる。同卓者はおじさん、綱川、須田の3名だ。綱川は同学年で、オータムチャレンジシップと言うタイトルも2回とっている新鋭のプロだ。彼は同年代でありながら私よりも先にAリーガーになっている。そんな強者二人とおじさん、漢と漢の闘牌が今、始まろうとしていた。
いつも通り須田プロの趣の無い仕掛けが卓上を舞っていた。須田プロの麻雀を見たことがある人はわかると思うが、彼は麻雀を打っている時、まるでダンスをしているかのように牌を切る。ドラクエのパペットマンを想像してもらえればわかりやすいだろう。あんな感じだ。
それに対して綱川は、一発裏なしのタイトルを二回とったことがあることからわかりやすいと思うが、重いパンチを繰り出してくる。
はじめの一歩で言うと、宮田と千堂を同時に相手をしているようなものだ。なかなかの手強い相手だ。
そんな中、綱川が山から牌をこぼした。すみませんと謝り、綱川が所定の位置に牌をもどした。麻雀プロが牌をこぼしたのだ。会釈程度の謝罪で許されるものか。仲林は憤慨し、こう言い放った。
「綱川さぁん、その程度の謝罪で許されると思いますかぁ?誠意を見せてくださいよ、指ですよ、指。指詰めましょか?」
当然、仲林は冗談で言っている。渾身のボケだ。しかし、いつもはかまってくれる須田さんも綱川を微動だにしない。畳み掛けるように言葉を続けた。
「指ですよ指ぃ、誠意を見せましょや?綱川さぁん」
アカギで有れば、「その時、綱川微動だにせず」とナレーションが入ってもおかしく無いぐらいに動かなかった。なぜだ、仲林の渾身のボケを殺すのか。当時は結構自分で面白いと思ってこのボケを繰り出していた。しかし彼らは何も発しなかったのだ。
それから何回か麻雀を打ち、夜も遅くなったので、仲林は家に帰った。
次の日もまたポンに遊びにいくと、綱川と須田さんが真っ赤な顔をして仲林に話しかけてきた。
「お前、昨日知っててあんなこと言ってたのか?」
全く身に覚えがない話をされている。なんのことだ。なんか須田さんが怒るようなことしたかなと色々考えていたが、全く思い出せない。なんのことですかと須田さんに尋ねる。
「あのおじさん、両手の小指が無いんだよ」
血の気がひいた。マジでびびった。全く小指が無いことに気付いていなかった仲林は、意気揚々と指ですよ指、と綱川に絡んでいたのだ。隣に指がないおじさんがいるのにもかかわらずだ。
あとで聞くと、彼はポンでは二丁拳銃というあだ名で親しまれていたおじさんだったのだ。実際親しまれてたのかは知らない。黙々と麻雀を打つおじさんだった。今思うと小指が無いお客さんを雀荘に入れるなとは思う。
この日ほど血の気が引いたことは無かった。生きててよかったと思った出来事だった。
これが「指詰めろ事件」の真相だ。
日本プロ麻雀協会所属。主なタイトルは第10期雀竜位、第7回オータムチャレンジカップ優勝。麻雀界きってのゲス雀士として賛否両論を巻き起こしながらも前向きに活躍中。