動かぬ勇気が
結果を呼び込む
丸山奏子、
勝利への
タイトロープ
文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2021年11月1日
大和証券Mリーグは開幕から1ヵ月が経ち、各チームが16戦を消化して11月を迎えた。レギュラーシーズン全日程の1/6程度ではあるが、大きく明暗が分かれたチームがある。首位を快走するEX風林火山、そして300以上のマイナスを背負っている赤坂ドリブンズだ。
11月の初戦を任されたのは、丸山奏子。苦戦が続くドリブンズにあって、試合数がわずか2戦とは言え、チーム唯一のプラススコアを記録している選手である。
ここで勝てばチームを、そして応援してくれるファンを勇気付けられる。
それができるのは、卓につく自分しかいない。
この一戦に懸ける思いは、並々ならぬものがあったはずだ。
第1試合
東家:丸山奏子(赤坂ドリブンズ)
南家:内川幸太郎(KADOKAWAサクラナイツ)
西家:瑞原明奈(U-NEXT Pirates)
北家:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
東2局1本場、瑞原が4巡目にカン待ちリーチ。くっつきの1シャンテンからこのテンパイはやや不服だろうが、それでもドラ赤で打点はついてきている。
しかし、このリーチに内川が、など強い牌を押していく。4巡目リーチ、ターツ落としなしの即リーチは愚形の可能性も高く、親番で必要以上に日和っていては勝てないという、攻めの気持ちがあっただろう。
そして丸山もドラを暗刻にし、ドラスジの打ちで卓上に存在感を示す。
も押して待ちのドラ3リーチで追いつくと、先制リーチの瑞原が一発でを掴み、丸山が8000は8300の出アガリ。欲しかった序盤のリードを手に入れた。
丸山は東3局1本場でもスルスルと手を進め、4巡目にしてポンでテンパイ、赤を1枚引き入れて内川から3900は4200を出アガリ。着実に点数を積み上げると共に、局を潰していく。
だが、ここから瑞原の巻き返しが始まる。東4局にはこの日3度目のリーチをようやく実らせて2000-4000のツモ、リカバリーに成功して丸山を追う。
瑞原は、南2局1本場には内川から3900は4200を出アガリ。南3局では丸山との差をテンパイノーテンで詰め、点差はわずか100点まで縮まっていた。
迎えた南3局1本場も、瑞原が先行する展開。6巡目にドラを引き入れてリャンメン3メンチャンの1シャンテン、打点もあり、アガれればこの試合の決め手になりそうな手だった。
対する丸山も1シャンテンだが愚形残り、9巡目にツモ。
ここで丸山はカンのターツを払う選択した。上家の寿人にソーズが高く、をトイツ落とししていることから、ソーズよりもピンズの方が鳴きを使った進行もしやすそうだという判断だろうか。
この選択が正解だった。より先にと引いてテンパイ。
ダマテンに構え、すぐに瑞原のを捉えて1300は1600の直撃。目下のライバルを突き放し、親を落とすことに成功した。
この局面では、リーチをかける選択もあったようには思えた。小さくアガっても結局はオーラス勝負になるため、大きなアガリで瑞原にある程度厳しい条件を突きつけよう、という考えだ。ツモって一発か裏が絡んでの満貫になれば、瑞原の満貫ツモ条件が消せる。
ただ、丸山はそれ以上に「より安全に瑞原の親を蹴る」ことを考慮してダマテンに構えたのではないだろうか。理由としては
・瑞原の最終手出しがドラで、今にもリーチが来そう
・ドラまで手出しの瑞原の手は好形・高打点である可能性が高い
・瑞原がリーチをかけたときに現物での出アガリが期待できる
・自分の手はリーチの2600、自信があるわけでもない待ちでのめくり合いは避けたい
などが考えられる。
リスクとリターンは、麻雀においては常に選択を迫られている。その判断が正しかったのかどうかは、結果が示す。
南4局、アガリトップの丸山の手には役牌がトイツ。しかし、瑞原の第1打を鳴かなかった。ドラ表示牌に1枚見えており、明確に最後の牌である。
この選択について丸山は試合後、「鳴いてすぐアガれそうなほど手牌がよくなかった」と語っている。実際、鳴いた後の手は愚形ばかりでメンツも雀頭もない形、テンパイまではしばらくかかりそう。そこで放銃リスクを負うよりは、守備的に構えようと判断したということだ。
そんな丸山に追い風が吹いた。1600-3200ツモで寿人を逆転して3着になれる内川が、4巡目にを暗カン。6巡目にツモ条件を満たすリーチをかけた。
そのとき、瑞原の手には元ドラの、新ドラのが1枚ずつ浮いていた。自身の逆転条件を満たす材料として持っていた牌だが、どちらも切って内川に放銃となればほぼハネ満、そうなればラスまで落ちてしまう。