堀は南2局でもサクッと白のみの手で局を消化させる。Mリーグの舞台が1年目とは思えない手慣れたゲーム回しで3者を寄せつけない。
南3局。多井にとっては最後のチャンスといっていい状況だ。赤3つにの対子があり、456の三色も見えている。
が暗刻になった。これでどこからでも仕掛けて満貫が見込める。多井としては(頼むからかわしてこないで)といった心境か。
今回は朝倉だった。かわし手ではなくの三面張待ちリーチを放つ。(多井さん、三面張はこうやるんですよ)とフリテンではない純正品だ。ここで朝倉にアガられると多井はラス目に落ちてしまう。
よって、浮いているを切って勝負。もうこの手は絶対にオリることはないという宣言だ。全国の多井ファンはぜひこのシーンを見てほしい。戦う多井は何度見てもかっこいい。
堀はうまいこと字牌をキープしており、十分オリれそうな手格好だ。親の滝沢にさえアガられなければいい。ここで通ったを合わせる。(多井さん、争ってもらっていいですよ)とトスをしたようにも見える。
喉から手が出るほどテンパイを欲したくなる多井だが、施しは受けない。をスルーして門前にこだわった。やなどの追っかけリーチになれば勝機は十分。この状況下でも焦らないのが多井の強さでもある。
結果は朝倉がをツモり、大きな2000―4000のアガりを決めた。2着浮上の価値ある一撃である。これで多井は一気に苦しくなった。
オーラスは滝沢が堀から平和赤2の手をアガって試合を終わらせた。これで朝倉をまくって2着に。ちなみにトップ目の堀との差が離れているので、リーチはかけないほうが無難だろう。
最後の差し込みといい、全体を通して堀の手練れぶりが光った。おそらく、筆者が気づかないような工夫をいくつも見せていたことだろう。ライトな目線でいうと、結果的に多井をラスに追い落とした男としてインパクトを残した。鳴り物入りでMリーグの舞台にやってきた堀の実力は噂通り本物のようである。
この半荘は流局や連荘もなく8局で終了。多井はなんと一度もアガれぬ「焼き鳥」になってしまった。こんなことがあっただろうか。4着インタビューでも、メラメラと闘志を燃やしているさまがうかがえた。
堀は個人2勝目。チームは不調が続いていたが、月が変わって風向きも変わるかもしれない。
それにしても、守りたいこの笑顔。