徐かなること林の如く
滝沢和典の
冷静かつ巧妙な
ヤミテン
文・東川亮【月曜担当ライター】2020年11月2日
大和証券Mリーグの2020シーズンが開幕して、およそ1ヵ月。
各チームを応援しているファンにとってはワクワクドキドキハラハラの展開が連日繰り広げられているが、その中で最も安心した気持ちで試合を見ていられるのが、EX風林火山のファンではないだろうか。
10月に戦った16試合で4着に敗れた回数は全チーム最少、たったの2回。
それでいて1着4回2着8回と、確実にポイントを積み上げてきている。
月が変わって、11月はどうか。
この日は滝沢和典が連闘となった。
月の初戦を飾ることで、11月もポジティブに戦っていきたいところだ。
第1回戦
南家:内川幸太郎(KADOKAWAサクラナイツ)
西家:石橋伸洋(U-NEXT Pirates)
東2局。
滝沢はマンズが多めでホンイツに向かいたい手牌だ。
ホンイツトイトイが色濃く見えるだけに、まだ手が整っていない相手は見えていないマンズが非常に打ちにくくなる。
しかしここでは石橋、松本から立て続けにリーチ。
特に松本は2人に危ないを切って勝負と、やる気十分だ。
滝沢の手には安全牌である1枚切れのの暗刻があり、いざというときにはこれを切ってオリることも可能。
ただ、一発目にを持ってきたことで、打点こそ下がれどアガリの形を維持できたのが大きかった。
特には今切られたばかりで、完全に盲点。
内川から2軒リーチの現物を捉えることに成功した。
打点は8000から2600に下がっているとは言え、2人のリーチをかわした上に供託2000点を回収できた、価値のあるアガリだ。
東4局。
前局で内川から6400を出アガリした松本が、ここもドラを切ってのリーチで追撃に出る。
リーチを受けた滝沢の手牌。
この時点ではメンツが一つもなく、戦える手には見えない。
しかし、先に数牌から処理し、字牌が残っていることに注目したい。
これは自身の手がまとまりにくいことから、メンツの種を絞ってスリムに構え、守備力を確保していたということだ。
2巡目に切られているなどは明らかにいらなさそうな牌だが、こういう牌を残しておくことで、リーチを受けても対応していくことができる。
ある程度戦う形になっていた石橋が無スジを通していったこともあり、滝沢はさほど危険牌を勝負することもなくテンパイまでたどりついた。
こうした後手からの手作りを見据えられるか、というのも強い打ち手の条件の一つだ。
滝沢はここから、カンチャンターツのを第1打に選んだ。
この手を普通に進めたとしてもペンチャン待ちやカンチャン待ちが残りそうな形。
それであれば三色や七対子、あるいはチャンタなどの手役を見据え、高い手で勝負できそうなときは前に出る、という寸法だ。
安易に孤立のなどから切っていかないところに、安いアガリは見ないという潔さが感じられる。
この進行が功を奏し、道中で一度は切ったも引き戻したことで、チャンタ三色ドラがハッキリ見える形に。