徐かなること林の如く 滝沢和典の冷静かつ巧妙なヤミテン【Mリーグ2020観戦記11/2】担当記者:東川亮

次巡、すんなりテンパイするも、リーチはせず。

ヤミテンで8000点あるということで、静かにアガリを取りにいく算段だ。

場に切られたもギラリと光る。

そこへ石橋がリーチに踏み込む。

一発目にを引いた松本、河をじっくりと見て現物の打を選択。


ロンである。

しかも下家から。

これには松本も少々驚いたかのような表情。

滝沢の妙手が、獲物を確実に仕留めた。

親番となる南1局では、七対子のテンパイで2枚切れの待ちに。

しかし、ここでもヤミテンに構える。

現時点で役は七対子のみ、安くて待ちの良くない手でリーチしてノーガードになることを避けたか。

この後、石橋のリーチ、さらに宣言牌を鳴いた松本が一色手模様ということで、を引いて2枚切れのでローリング。

リーチで一か八かをしなかったことで、確実に守備をしていくことができる。

ここは仕掛けた松本がチンイツ、2000-4000のツモアガリ。

滝沢追撃の一番手に名乗り出る。

しかし、滝沢はどこまでも焦らない。

次局、ラス目の内川の親番では平和のみをヤミテンに構え、400-700のツモアガリ。

点差を詰められた状況ということでこの手をリーチし、ツモって裏ドラという形で再度リードを広げようという考えもあるかもしれないが、そこにはカウンターを食らうリスクも伴う。

行くべきところは行くが、そうでなければ静かに仕事を進める。

卓内の状況を見据えた盤石の打ち回しで、滝沢がこの試合を制した。

この日の滝沢は、リーチを一度もかけずに勝利した。

リーチしてツモって打点を作るのはいわば麻雀の王道だが、リーチをした結果アガリ牌を止められる、あるいは押し返されて放銃する、ということも、麻雀を打つ方なら幾度となく経験していることだろう。

ヤミテンで確実にアガリ、他者の手を自身のアガリで封殺し、無放銃で余計な失点はしない。

スマートでクール。

いや、EX風林火山らしく「徐かなること林の如く」とでもいうべきか。

豪快にリーチリーチで攻め立てて高打点を決める麻雀は見ていて気持ちがいいが、こうした渋い打ち回しも、また違った意味で麻雀の面白さを表現してくれていると思う。

11月の初戦で3度のアガリを決めて勝利した滝沢。

そのアガリには、奇妙な符合があった。

1回目のアガリはでロン。

2回目のアガリもでロン。

そして3回目はをツモ。

アガリ牌は全てだった。

「7」を3つそろえて勝ったのは吉兆、ラッキーセブンで大フィーバー、滝沢和典EX風林火山は11月も荒稼ぎ…と、果たして都合良くいくかどうか。

滝沢は勝利者インタビューで連闘を宣言。

こちらもくせ者ぞろいとの戦いとなった第2回戦については、山﨑和也さんの観戦記でお楽しみください。

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