熱論!Mリーグ【Mon】
石橋、朝倉が
転覆寸前でとどまる
「3着」の意味
文・梶谷悠介【月曜担当ライター】2018年12月10日
ボートレースというものをご存知だろうか。
競馬などと同じくいわゆる公営ギャンブルであるが、順位の当て方は少し変わっている。すべてのレースで6艇しか出場しないため(欠場等で5艇以下の場合もある)、1着2着を当てるだけなら比較的容易である。しかしそれだとオッズは低いことが多い。そのため高いオッズを狙うのなら1着~3着の並びをすべて当てる3連単買いが基本となる。
それゆえボートレースにおける3着はかなり重要だ。1着2着がほぼ決まったようなレース展開でも観客の興味は3着争いに向けられることもしばしば。ボートレーサーにとっても3着以上が評価の対象となるため必死に食い込もうとする。新人が3着を取ろうものなら場内で拍手が起きる。
さて、なぜいきなりこんな話をしたのかというと、私のHNツケマイがボートレース用語でこの世界を知ってもらいたかったからとか、断じてそういうわけではない。
スポーツにおける3着の意味である。
観客は1位に注目する。1位と争った2位にも自然と注目することになるだろう。だが見逃されがちな3着にもドラマが隠されているものだ。
麻雀では3着は順位点が-10ptとなかなか痛い。しかし4着の順位点は-30ptなので4着との比較でいうと20ptも違う。3着と4着がわずか数百点の差だったとしてもゲームが終了した途端2万点差となる。この2万点をいかに確保するかにも妙技が詰まっていることを忘れてはならない。
1回戦
起家 黒沢咲(雷電)
南家 佐々木寿人(麻雀格闘俱楽部)
西家 松本吉弘(ABEMAS)
北家 石橋伸洋(Pirates)
南1局3本場
石橋は早々にをポン、をツモってカンのテンパイを取った。
供託が2本と積み棒3本で1000点のアガりでも3900点の価値がある。現在3着目だが、上下の点差を見ると上に近づくというよりラス目を引き離すことに意味がありそうだ。
をツモる前はで、上家の松本から出たをチーして食い延ばしすることも可能だったがスルーしている。自力で引いてピンズが伸びた場合はそちらを残すが、は親の現物で将来待ちになったとしても悪くない。テンパイスピードを優先した判断が功を奏し、黒沢から出アガることができた。
南4局0本場
オーラスの親、をポンして何を切るか。
この局、石橋にとってのテーマは逆転ではなかった。この手を門前で仕上げても高くなりそうにない。軽くアガって次局以降に希望をつなぐのが狙いの一つだ。
かといってあまり直線的にもいけそうにない。3着を争う松本が攻めてきたときに押し返す準備をしておくこと、また黒沢からリーチが入った場合はオリも選択肢に入れなければならない。黒沢と寿人の点差を考えたら安手でアガるはずがないからである。つまり
○寿人からの攻め→ある程度押せる。アガリトップなので振り込んでも大丈夫な場合が多い。
○黒沢からの攻め→かわしたいが危険牌を打ってまでアガりを拾いにいかない。
○松本からの攻め→オリてもまくられる可能性があるため全力でかわしたい。ただし放銃のリスクは極力減らす。
以上のように対応することになる。
このことから石橋は北を残してを切った。
さらにツモで打
安全度を考えるとから切りたかったが、→の切り順だとがほぼないことになってしまう。手の早さをさとられないように捨て牌を工夫する。
を切れば広いイーシャンテンになるが、松本に対して暗刻のを切るのを遅らせたくない。未来の松本からリーチが入る→両面をチーして切りテンパイのビジョンが見えていたのだろう。石橋はを切ってを残した。実際松本はイーシャンテン、入り目によってはが当たりになっていた。オーラスの3着目とはいえ手を全力で構えない冷静な判断だ。
この局は寿人が1000点を黒沢からアガりきりトップを決めた。
1位:寿人(麻雀格闘俱楽部)+61.6
2位:黒沢(雷電)+12.1
3位:石橋(Pirates)▲23.8
4位:松本(ABEMAS)▲49.9
もう一つ2回戦も地味だが3着を決めた妙手を見てもらいたい。
起家 多井隆晴(ABEMAS)
南家 瀬戸熊直樹(雷電)
西家 佐々木寿人(麻雀格闘俱楽部)
北家 朝倉康心(Pirates)