これが打点派の構え。
しかしこの新井の執念は実らず、流局した。
南4局・大団円の時を迎える
オーラス、2巡目に多井の手が止まる。
この局も厳しいな…と思っていたところに、超ネックとなるをツモったのだ。
天を仰ぎ、そして考える。
これまでの数ある対局を振り返る。
これは…優勝者のツモだ!
多井はここまで、アガった2局以外はじっと耐えてきた。
ここで3度めとなる…
ギアをトップに入れた!
役牌のを打ち出し、目一杯に構えたのだ!
中盤に新井もテンパイが入る!
このメンホンをリーチ!
一発か裏が乗らないと逆転できない。
その際は見逃して次局満ツモにかけるプランか。
親の本田も井上の助けを経て、タンヤオ・高め三色・ドラドラのテンパイを入れる!
このぶつかり合いの中…
とうとう多井にもテンパイが入る!
最後の選択。どちらに受けても見た目3枚だったが、
「最強」を決める戦いは半荘何回が妥当だろうか。
4回?20回?
ーーいいや、引き伸ばしても薄くなるだけ。
1回で十分だ。
「ツモ1000・2000は1100・2100」
本当の強者を決める戦いは1回でも十分なのかもしれない。
数少ないチャンスをものにして、多井が最強の座を射止めた。
近藤誠一、鈴木大介…そして多井隆晴。
最強戦のファイナルの観戦記を担当して3年目になるが、勝つべく人が勝つべくして勝っているようにしか思えない。
インタビューの場で、数万人の頂点に立ち、麻雀打ちとして人間としてもっと成長していかないといけない…と決意を語った多井。
多井が優勝した瞬間、全国から安堵のため息が聞こえた気がした。
他の麻雀プロや、全国の猛者たちは
「ニューヒーローが誕生するよりは、強い多井さんが勝ってくれてよかった。来年その多井さんに自分が挑戦して勝つ!」
と思っているに違いない。
最強戦2021は、もう始まっている。
麻雀ブロガー。フリー雀荘メンバー、麻雀プロを経て、ネット麻雀天鳳の人気プレーヤーに。著書に「ゼロ秒思考の麻雀」。現在「近代麻雀」で戦術特集記事を連載中。note「ZEROが麻雀人生をかけて取り組む定期マガジン」、YouTubeチャンネル「ZERO麻雀ch」