多井隆晴に隙はなし！　全てを見通した鉄壁のロン牌ビタ止め【Mリーグ2020観戦記１／21】担当記者：東川亮

しかし、多井は冷静に場を見て・・・

現物のを抜いた。

多井は、園田のリーチにが危険だと読んでいたという。

とは言え、これはいわゆる「勝負に見合う手」。

自身の手に甘えず溺れず、読みを信じてロン牌を止めたのはさすがのひと言だ。

 

ここは勝負形の萩原がいったんは止めたを打ち、園田がロン。

萩原も気配は感じていたのだろうが、点数状況に背中を押されてしまった格好だろう。

局が流れた後、モニターは下家の園田にチラリと視線を送る多井をしっかりと映していた。

 

園田は次局も萩原から3900をアガるが、南3局の親番では萩原のリーチタンヤオ平和にテンパイから放銃。

そこに裏ドラが3枚乗って、12000の失点となってしまった。

2番手の園田が大きく点数を減らすのは、多井にとっては願ってもいない展開。

まるで全てが多井の思惑通りかのように試合が進んでいく。

南4局は、手牌が悪いことから得意の配牌オリ。

親の萩原にだけは放銃しないよう1巡目から安パイを溜め込んだことで、萩原から4巡目にリーチが飛んできても、あぶなげなく守備に回る。

ここは萩原が滝沢から5800の出アガリ。

一転して次局は配牌とツモがかみ合い、好形・高打点が期待できる手格好に。

ただ、親の安パイを抱え続け、手を目いっぱいには広げない。

テンパイ一番乗りは滝沢だった。

ドラ待ちの七対子、リーチしてツモればハネ満で着順アップとなるが、残念ながらこの待ちは山にはない。

多井は滝沢に対しては倍満までなら放銃してもトップだ。

故に、直前に通った發ではなく萩原の現物で滝沢に通っていないを切った。

当たってもいい、という打牌だ。

しかし滝沢のアガリは生まれず、最後の手番を迎える。

リーチに通っている牌はいくつかあるが、ここで多井は少考。

選んだ牌は。

通っている牌だが、多井はその中から、あえて園田が鳴けそうな牌を切ったと思われる。

多井の立場からすれば、萩原に連荘されるよりは滝沢にツモってもらう方がよほどいい。

それゆえ園田に鳴いてもらい、現状萩原にまわるハイテイを滝沢までズラしてもらえれば、ということだろう。

ソーズはが全て場に切られているもののその下はあまり場に切られておらず、他者がある程度持っていると考えられる。

まさに、これは園田が鳴ける牌だった。

園田としても、滝沢が倍満をツモっても2着キープで試合を終えられる。

多井との利害は一致するため、チーしてハイテイをずらす。

そのとき、萩原は受けの残るイーシャンテンだった。

テンパイして次局に望みをつなぎたかったが、実らず。

そしてハイテイにあった牌は、萩原が引けばテンパイしていた。

最後の瞬間まで多井が試合を支配し続けた・・・それを象徴するかのような、印象的な幕切れだった。

 

見ている限り、多井の麻雀は盤石そのもの。

点数を持ってからのに打ち回しには、全く隙がなかったように思えた。

しかし試合後は、オーラスで守備のバランスをとったがあまりメンツを逃し、ハネ満をアガリ損ねたかもしれないことを悔いていた。