Mリーグの一番長い日 揺らぐシャーレの行方は【Mリーグ2020ファイナル観戦記5/18】担当記者:ZERO

「8000」

この時ばかりは冷静な勝又も安堵のため息を1つついた。

またしても風林火山は死線を1つ越えたのだ。

その後は勝又への挑戦権を得るために、多井と内川がぶつかった。

東2局

まず内川が鬼の形相でリーチを打つ。

 

チートイのドラ【3マン】単騎だ。

そこへ親の多井も仕掛けて対応。

こちらも並ならぬ雰囲気を醸し出している。

「この2日間は今まで3年間同じチームでやってきた見たことがない表情をしている多井さんでした。」

とチームメイトの白鳥は語る。

レギュラーシーズン圧倒的な強さを見せつけたABEMASがまさかの大失速。

逆転の起こりやすいレギュレーションとはいえ、ここまでの展開になるとはショックも大きいはずだ。

多井はこの状況に追い込まれたことに責任を感じている。

だからこそ負けられない。

 

2つ晒してのホンイツテンパイで内川のリーチに猛プッシュしていく。

どちらが勝つのか。

そしてどちらが散るのか。

日吉「今期最後のめくりあい!」

多井か。

内川か。

この局の結末は…

2人テンパイで流局。痛み分けとなった。

2人の間で揺らいでいたシャーレはどちらにも寄り添わない。

そしてその後も2人にアガリが訪れることはなかった。

 

皮肉にもほぼ目無しとなっている村上にアガリが集まり、多井と内川はオーラスを迎えて

役満の直撃のみ、というおよそ現実的でない条件まで点棒を減らしてしまった。

最後も村上がアガリ切り、トップを決めた。

こうして…

22:30 風林火山の優勝が決定した。

内川の表情は晴れやかだった。

あと一歩及ばなかったという悔しさと、やれることはやりきったという充実感と。

多井は悔しさを滲ませ、泣いていた。

よほど責任を感じていたのだろう。

「今年はこんな結果になってしまったけど、いつか勝ってみんなで笑いたいと思います」

レギュラーシーズンもセミファイナルも好調だっただけに、ABEMASの悔しさは計り知れない。

今年の最終戦は、麻雀の持つ無情さを感じる半荘となった。

どうしても負けられないと臨んだ2人が、ただの1つのアガリも拾えなかったのだ。

負けられないのはみんな同じ。

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