王の帰還　幾たびの逆境を乗り越えた石橋伸洋が、U-NEXT Piratesの新たな道標となる【Mリーグ2021観戦記11／30】担当記者：江嵜晋之介

ドラのをアンコにしてイーシャンテン。
今度こそアガりたい…！　を切って目一杯に構える。

しかし2巡後、高宮からリーチがかかる。

リーチ七対子の待ち。河にがあるので通常の単騎よりやや出アガりを期待できる。

この時の石橋の手牌。テンパイになる牌の種類は・・・・・・の7種類だが、山に残っている枚数がかなり少なく、テンパったとしても待ちは1〜2枚と見た目以上にとても厳しい状況だった(を引くと打でリーチに振り込み、を引くと待ちで空テンになってしまう)。

2巡後、石橋が引いてきたのは。

カン待ちで即リーチをかける。は山に残り１枚。
放銃・空テンを回避するテンパイを入れることに成功。１枚だがアガりの可能性はまだある。そして一発目に引いてきたのが…。

だった！ラスト１枚のを一発で引き当てリーチ一発ツモ赤ドラ3の跳満を成就させる。

やっと、やっとチャンスをアガりまで結びつけることに成功し一気にトップに立つ。今季初トップが見えてくる大きなアガりとなった。

その後、南１局では親の高宮から満貫を直撃しさらに加点。
2着の茅森との点差を広げる。

ただ石橋はまだ安心できない。
2着の茅森はラス親が残っている。茅森といえば先日の対局で、6,500点のラスから爆発的な連荘を決め大トップを取ったのが記憶に新しい。今季の平均打点は9,000点越えと信じられない数字になっている。

石橋は逃げ切ることができるのか。

明暗を分けたのは南３局だった。

石橋の手牌は3巡目にリャンシャンテンとなる。

赤が１枚あり、先に愚形が解消できれば先制リーチにも踏み込みやすい。更なる加点チャンスが見込める手だ。

しかし2着目の茅森が黙っていなかった。
4巡目、堀が切ったダブをポン。

ソーズの混一色が漂う河。ドラがなので混一色まで育っていると跳満クラスまで考えられる。

その直後、石橋がツモ切ったをカンチャンでチー(これでソーズの混一色は消える)

そしてを持ってきた石橋が手出しで切ったを両面でチー。

その2巡後、石橋もテンパイを入れる。
を切ればテンパイだが、ほぼテンパイであろう茅森に対してこのは切っていい牌なのだろうか？

実はこの茅森の仕掛け、落ち着いて考えれば満貫の可能性はかなり低いことがわかる。

手役がダブのみしかないので、満貫になるためにはドラを複数枚持っている必要がある。ただ茅森はを先に切っておきながら、でをチーしている。仮にドラのを対子で持っている場合、の形からを先に打ったことになるので辻褄が合わなくなる。

さらに石橋の目から・が見えており、茅森は序盤にを捨てているのでで雀頭ができているケースも少ない。
以上のことから茅森はドラを持っていないケースが多く、万が一で放銃したとしても3900止まりで逆転されることはないため、見た目以上に押しやすくはある。

しかしここで石橋は長考に入る。
万が一…万が一満貫になるケースを見落としていた場合、あるいは茅森の手牌がレアケースだった場合、満貫の直撃はオーラスを前にしての逆転を意味する。

「はたして…本当に自分の読みを信じていいのか？」

一応が現物であるため、対子落としをしつつの周りを引けばテンパイ復活の道もある。

石橋が出した答えは…。

「リーチ」

を切ってのリーチだ！
茅森の打点、自身の待ちの良さを加味した上で勝負に出る。
決着は直後だった。茅森がを引いてしまい一発で石橋に放銃。

リーチ一発赤裏の12,000点。
このアガりが決め手となり、石橋は今季初トップを獲得することができた。

インタビューで少々慌てていた石橋。
緊張していたというより、トップをとることができほっとした様子に見えた。