”誰もアガらない局”は”見るに値しない局”なのか。流局から見るMリーグ。 【Mリーグ2021観戦記12/17】担当記者:渡邉浩史郎

上家の東城はピンズの使いにくいところを続々と引いてしまった上に、二枚切れとはいえ【發】までもってきてしまう。いくら親番とはいえこれでの押し返しは蛮勇というもの、冷静に降りを選択。

粘る白鳥。白鳥の目からは【5ソウ】が四枚見えており、内川の【5ソウ】【6ソウ】ターツ落としが空切りでないことが見えている。その後の【南】【東】手出しにより、この【4マン】での放銃はほとんどないといっていいだろう。

小林も絶好のカン【4マン】が鳴けて粘る。この手、瞬間聴牌したときに聴牌を取るならピンズを切ることになるが、内川へのピンズの通り方によって切る牌を選ぶことができ、他にも2~9までのピンズを吸収しながら聴牌を狙うことができる。東城の降りも見えているからこそ、絶対に鳴いたほうがいい【4マン】であろう。

次巡、内川から【6ピン】が余ったタイミングで上家白鳥から【8ソウ】が出るが、これはスルー。いくらマンガンとはいえ、トップ目からそんな一か八かは行わない。

【4ピン】を引いて、予定通りといった感じにソウズで回る。

そしてこの不思議な理牌。

これは内川の現物【6ピン】が出たとき用のシフトだろう。

【4ピン】【4ピン】【5ピン】【5ピン】【5ピン】【6ピン】【7ピン】の理牌からチーすると、どうしても単独で自立する牌が出てしまい、牌をこぼす危険性につながりかねない。こういった配慮はいかにも小林らしい。

しかしその後小林に聴牌が入ることはなく、内川の一人聴牌で流局。

強い南家の仕掛けに対して、上家に位置する親が迂回せざるを得なくなる。それを受けて子形が頑張るも、結局全員が迂回させられて流局。

ある種アナログ的な「親の連荘は南家の責任」の概念がなぜ生まれたのか、よく分かる一局だった。

【南2局】

南入して再び東城の親番。小林が少し点棒を伸ばし、東城と内川の立場が入れ替わった状態。

ここが頑張りどころの東城だが配牌は非常に悪い。

一方のトップ目小林の手牌はまるで対照的。勝負ありかと思われたが……

この局先制したのは内川。微妙な配牌をまとめ上げて勝負手のリーチまで辿り着く。

形を作りに行った東城だがどう頑張ってもノーメンツ。点棒上では一番の対抗馬である”三着目の親番”であるが、ここで早くも離脱せざるを得ない。

形的には一番の対抗馬であった小林だが、無筋2枚と点棒状況の二つともが降りを告げている。迷うことなく現物を中抜き。

白鳥も多少の無理なら通したい場面であったが、フリテンターツ残りに大量の無筋とあっては点棒がいくらあっても足りはしない。

全員粘ることさえ許されずの流局となった。

流局の中では一番多い、一人旅の流局だ。

全三局の流局いかがだったであろうか。

ハイライトに選ばれることはまずないが、それでも確実に半荘という一つのドラマのワンシーンである流局。

劇的な逆転ツモがあった日にこのような記事を書くこと、もっと盛り上がる記事を期待してくれていた皆様には申し訳ないが、劇的な逆転ツモであったからこそハイライトに選ばれない流局を書きたいと思ったのも事実。

最後に見事桜色の【赤5マン】をツモリ上げた騎士の決めポーズをお見せすることで、水に流してもらえないだろうか。

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