魂の押し引き
園田賢が繰り出す魔法が
想像し得なかった
世界を作り出す
文・江嵜晋之介【火曜担当ライター】2021年12月28日
第2回戦
東家:小林剛(U-NEXT Pirates)
南家:二階堂亜希(EX風林火山)
西家:東城りお(セガサミーフェニックス)
北家:園田賢(赤坂ドリブンズ)
麻雀で勝つために必要な技術知識には色々な種類がある。
始めたての頃は手役や基本ルールを理解することすら大変だが、
そこからさらに鳴き・リーチ判断、他家の動向把握など上げ出すとキリがない。新しく覚えた知識でもいざ出しどころを間違えるとかえって足かせになりかねないため、上達を実感することも難しい。
中でも抜群に難しいのが「中盤以降の押し引き」だ。
麻雀は不完備情報ゲームで、プレイヤーは自分が知ることができる情報のみで知り得ない部分を推測しながらゲームを進める必要がある。
1つ牌が切られるごとに変化する状況に合わせた押し引きを実行することは、並大抵のことではない。
私の知人が以前、
「オーラス5年、鳴き10年、押し引き一生」
と話していて、言い得て妙だなと思ったことがある(寿司屋の格言みたいだが)。
打つ度に出会ったことのない場面に遭遇し、その度に最適解を捻り出す。その途方も無さが、我々を惹きつける麻雀の魅力の1つなのかもしれない。
12月28日の2回戦に登板した園田賢。
これまでも数々の引き出しを見せてくれた園田だが、今回も魔法のような選択を見せてくれた。
今回はその一部をご紹介させてもらいたい。
東4局
親番で6,000オールを炸裂させた東城がトップに立っていた。
その東城が5巡目に2枚目の自風をポンして打。
次巡、をカンチャンでチーして打。
1枚目のをポンしていないことから、ドラが固まった大物手ではないことが予測されるが、トップ目の仕掛けであることを考えるとある程度まとまっていてアガりが見込めると読めるだろう。
その直後、園田が切った1枚目のを南家の小林がポン。
ターツを落としている。小林の仕掛けであるため打点こそ読めないものの、両面を払っているためこちらもスピード感はありそうだ。
さらに小林は亜樹が切ったをポンして打。
10巡目に園田が切ったをチーして打。
待ちのテンパイを入れる。
東城をケアした結果か最終手出しがになっている。
一見の2度受けを外したようにも見えるが、その場合を鳴いた時の形が下の図のような七対子のイーシャンテンだったことになり、を一鳴きしているのが少し不自然に見える。
やはりピンズの混一色、あるいはドラが頭の両面・役牌のシャンポンが本線だろう。
そして東家の園田は、12巡目にを引いてこの形になる。
全員の捨て牌がこちら。
小林がテンパイを入れた直後、東城も待ちのテンパイを入れていた。
トップ目東城を追いかける園田。名一杯に構えるなら当然打発になるが、園田はここから打とする。
頭を崩し、シャンテン数を落とす選択。
見えていない役牌が東と発の2つで、仕掛けている2人の河に中張牌が多く出ているため役牌の危険度はより増している。
頭を一旦崩し、場合によっては単騎までを視野に入れた選択だ。