君は見たか 目に映る景色を一変させた魔王の一撃を【Mリーグ2021-22 観戦記3/22】担当記者:ZERO/沖中祐也

引き当てる!

音速ビタ止めからの薄氷のテンパイ復帰。

こうして

寿人はテンパイ流局にこぎつけることができたのである。

魔王降臨

ガラガラ… ゴウンゴウン…

牌が吸い込まれ、かき混ざる音だけが卓上で響く。

出そうで出なかった役満。

本来終わっていたはずの一局。

そして、燻っている4人の思い。

あらゆる出来事、想念が

濁流となって寿人の手牌へと渦巻いていく。

その濁流は

もう誰にも止められなかった。

寿人はリーチを打つ。

この時点で待ちである【1ピン】【7ソウ】は、山に3枚いた。

直後の魚谷の手牌。

【2ソウ】【5ソウ】待ちで追いついたが、ドラ【東】が出ていく形。

ロンと言われたら18000を覚悟しなければならない。

これが優勝のかかったファイナルの終盤なら、魚谷も腹をくくって前に出たかもしれない。

しかしまだセミファイナル。そしてトップを争っている南1局だ。ドラを切るにはあまりにリスクが大きすぎる。

魚谷は【3ソウ】を切って頭を下げた。

これでぶらり魔王の一人旅、そうだ三途の川に行こう、となった。

あとはツモ山をちぎっては投げすてていくだけ。

待ちの枚数は減らない。

カメラも世紀の瞬間を捉えようと寿人にフォーカスをさだめる。

牌山に手をのばす寿人を、横からのアングルで抜いた瞬間だった。

「ツモ」

「16000は16100オール」

ああ、これのことだったのか。

裏ドラに眠っていた雪のような【白】を見て、小林未沙は今朝を思い出していた。

「はい」

気丈にふるまう魚谷の返事が卓上に虚しく響き渡る。

紫電一閃、乾坤一擲、捲土重来… いろんな四字熟語が浮かんだが、やはりこの言葉がぴったりだろう。

魔王降臨。

今までに一撃のアガリで相手を黙らせたシーンを何度見たことか。

焼け野原となった以降は、オーラスに内川が6000オールをアガり2着を確保。

最後に魚谷が7001300をあがって3着に浮上した。

なんとトップ目だった朝倉はラスに転落してしまうことに。

もしもプレーオフのラッキーボーイなんて概念があるとしたら、間違いなく寿人になるだろう。

格闘倶楽部は2戦目も伊達がトップを取り…

一気に首位まで躍り出る。

逆にセミファイナルを首位スタートで迎えたPiratesがボーダラインまで下がってしまった。

3456位が僅差で混沌としている。

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