一足お先に良いお年を!
KONAMI滝沢和典が
”丁寧な麻雀”でトップを死守
文・中野巧【火曜担当ライター】2025年12月23日
麻雀で難しいのは、「手が悪い時にどう打つか」だ。手を組まないと相手のアガリかテンパイ料で失点する未来しかなく、悪い時に目いっぱい広げると、真剣に木剣で挑むように、打点も安く待ちも悪い手で相手のリーチや仕掛けに対し、無謀な勝負をしなければならない。
しかし、人は感情の生き物である。麻雀を打っていると「アガリたい」気持ちが芽生え、悪い手から強引に攻め、より大きな失点になることは誰しも経験があるだろう。麻雀あるあるで、「こちらを切れていれば」アガリがあったとき、感情を抑えられずに勝負すると負ける、というものがある。麻雀において「手が悪い時にどう打つか」は永遠のテーマであり、不完全な存在が完璧を目指す動きは「美」を感じる瞬間でもある。
本日は丁寧な麻雀を心掛けた滝沢和典が、乱暴な選択を取らず、その結果トップを死守する。2着の下石戟は、東4局4巡目に高め倍満のテンパイが入るも交わされてしまい、オーラスでは満貫ツモ条件のリーチを打つも、他家からの出アガリとなり2着となった。
3着の阿久津翔太は現時点でのリーチ率が30%超えと、まっすぐ手を広げる打ち方で進めるも勝負手が入らず、最低限の仕事で3着を維持。
4着のHIRO柴田は手が悪い時に少しでも相手の手を止めさせる積極的な動きで「なんとかする」意思が伝わるも、大物手が複数回入るも実らず4着となった。
試合後、トップの滝沢に連絡し、あの時の局面、思考を聞かせてもらった。彼のいう「丁寧な麻雀」と手が悪い時はこういう選択があるのか、と思わされたHIRO柴田の選択をピックアップし、お届けしたい。
第1試合
東家:滝沢和典(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
南家:HIRO柴田(EARTH JETS)
西家:下石戟(BEAST X)
北家:阿久津翔太(KADOKAWAサクラナイツ)
1 南2局2本場 丁寧な麻雀から感じた滝沢の覚悟
滝沢は試合後のインタビューにて、過去に「乱暴なプレーで低迷してきたことを反省し、丁寧な麻雀でいこうと」語った言葉通り、様々な選択がある中、滝沢の所作のように波を立てない牌を選択した。滝沢のいう「丁寧な麻雀」とは楽な選択を選ばず、どんな場面でも正解を絞り出そうとする麻雀プロとしての覚悟である。
この手から滝沢が切ったのは
。この理由を本人に解説してもらった。
「柴田さんに鳴かれない牌で、
が山にありそう」、「阿久津さんが![]()
のリャンメンターツ落としがあって、早そうだったこともあります(
は阿久津さんに安全牌」。
と相手の仕掛けに対応しつつも後々の安全な牌かつ山にいそうな
を残す打
とした。
ダブ
をポンしている柴田がもう1つ鳴きを入れた場面。滝沢は
をツモり、
–
のフリテン待ちのテンパイ、点数がなければリーチもあり得るが、ここは牌を縦に置いた。リーチをするとそれ以降考えることがなく楽な選択だ。しかし滝沢はあえて難しい道を選んだ、毎巡「このテンパイを維持するか」を検討して、いかねばらならい。まさに滝沢が言っていた「丁寧な麻雀」だ。
その後、様々な牌を引いてテンパイし、リーチをかけてもおかしくない手も現物や安全牌を切り、柴田が打ち出した
で阿久津への放銃。滝沢は無傷で1局を消化することに成功した。
この局を振り返っていたとき、滝沢がぽつりとこぼした「簡単な選択よりもなんとか考え続けて正解をひねり出したい」という言葉を思い出した。
2 南1局 解説もビックリ ミスリードを誘うHIRO柴田の
切り
解説の石橋伸洋はこの打牌を見て5秒後に、「すごくないですか」と言葉を発した。解説があの赤切りで有名な石橋なのはもちろん偶然だが、柴田は4巡目にこの手牌から
を切った。柴田いわく「手が悪すぎて、ホンイツよりに考えた」という一打は、悪い手の時にどう打つか、という1つの回答になりうる選択だ。もしかすると柴田は繊細な勝負を好むのかもしれない。こういった動きは相手の手を止めさせ、突き抜けたトップが取りにくくなり、それにより、例えば今日滝沢が取った3万点台のトップのような展開になりやすいからだ。
これにより滝沢が2枚切れの
を残して、打
とした。滝沢はこの局を振り返り、「見事におろされました。点棒を持っているので、オリてもいいかなと思ったけど。ただ今牌譜で開かれた手をみて『やられたな』」と答えた。
柴田がイーシャンテンとなるも、阿久津から先制リーチが入る。解説の石橋が「この捨て牌はおかしい」と即座に反応し、対局者の滝沢と柴田は「阿久津はチートイツだろう」と思っていた。
だからこそ、滝沢は2枚切れの
をも切らずに現物を切り、ドラが3枚あるチートイツのイーシャンテンに取らなかった。
柴田はテンパイを取らず、チートイツの単騎に当たりうるドラを残して無筋を切った。
これは滝沢が考えているときの表情である。阿久津への現物と安牌がなくなった滝沢は「HIRO柴田さんがラス目だったこともあり、仕方なく
」を打った。
柴田がチーして、山に1枚あるドラ単騎のテンパイ。しかし結果は流局となった。
あのバラバラな配牌で4巡目に赤ドラを切った柴田が最後は形勢逆転、山に0枚の阿久津を追い抜き、アガれば満貫の手を仕上げた。
柴田は結果4着も、独創的な選択と相手に楽をさせない展開づくりで勝負を盛り上げた。













