オーラスの親番の堀は、を残して打。を縦に引けばタンピンも狙える。まだ序盤なので目一杯に広げた一打だ。
を引いてターツが増えたのちの6巡目、
堀のツモは。
一瞬も迷うことなく堀は、
をツモ切った!!!
巻き戻すと、
この手は、平面なら打としていわゆる5ブロックに受けるのが有力だ。全てのリャンメン受けをこの瞬間残しつつ、を連打する間に引いてくる安全牌などの余剰牌を持てるのがメリットである。
だが、この手の最高形は456や567のピンフ三色。打としても三色目は残るが、やがアンコになったときや、を引いてが雀頭候補になったときには、三色が狙いづらくなってしまう。
ならば場に1枚出ているを打つことで、堀はピンフや三色を大本線として狙っていったのだろう。手役重視の6ブロック打法だ。
次巡に堀は、
をツモ。ここで堀は時間をかけた。
堀が選んだのは、
! 狙いは、またもや横だ!
ここも、雀頭が2つの5ブロックに受けるために、ターツを払う選択肢もあったことだろう。そのルートでも456や567三色は残る。
ただ、場を見てもはかなり良さそうな受けに見える。ピンズも悪くなさそうだが、あと数巡かけてから他家の河を見て決める方が、ターツ選択の精度は上がりそうだ。
このように「選択を後回しに出来る」のが6ブロック打法の利点だ。
我々が不特定多数の相手と打つフィールドでは、6ブロック打法は危険なことが多い。
この構えだと安全牌が持てないうえ、「この後で」どこか1ブロック分のリャンメンターツを切ることになるので、中盤以降の危険が増す。
だが堀は、オーラスで皆が直線的に進めていないことからも、それほど守備に重きを置かなくても大丈夫だと判断したのではないだろうか。
そして何より、親番でのこの手を確実にピンフでアガリ切るため、ターツ選択を「積極的に保留」したのだろう。次に分岐が訪れても、その時点で正解を選ぶ自信が堀にはあったのだと思う。
次の手番で、
堀はツモ。
さぁ選択だ。
ターツ外し!
通常は端にかかったターツがよいとされているが、
ここはソウズの上が明らかに安い。もも悪くないが、の方がなお良さそうだという判断だろう。三色変化も少しだけ考慮していそうだ。
2巡後に、
を引いてピンフテンパイを果たした堀は、リーチをかけて、
まさにシビれる手順。
僥倖の裏裏。この4000オールで堀は逆転トップ。この日は連闘であったが、連勝を決めた。
セミファイナルでも、堀の「嬉しいです」から始まる「至極の一局紹介」が聞けるか。
いよいよ迫ってきたファイナルシリーズ。
今日紹介した多井、堀、両選手がどれくらいポイントを獲得出来るかが優勝争いの鍵を握っているに違いない。
京大法学部卒の元塾講師。オンライン麻雀「天鳳」では全国ランキング1位。「雀魂」では4人打ち最高位の魂天に到達。最近は、YouTubeでの麻雀講義や実況プレイ、戦術note執筆、そして牌譜添削指導に力を入れている、麻雀界では知る人ぞ知る異才。「実戦でよく出る!読むだけで勝てる麻雀講義」の著者であり、元Mリーガー朝倉康心プロの実兄。x:@getawonarashite