Pirates・石橋伸洋の
一番長い日
文・沖中祐也 (2022年4月16日)
Mリーグの放送終了後、イカした洋楽と共に流れてくるエンディングがかっこいい。
一日の流れをその日のうちに編集する技術は、さすがはABEMAといったところか。
その中でもセミファイナル最終日となる4月8日のエンディングはもう何十回もリピートしているくらい、群を抜いてかっこよいのだ。
たとえば…
最終戦に臨む勝又のシーン。
軍師を超えて軍神の迫力を醸し出している。
後ろの小林とのコントラストも際立っていて、よくこんな角度でとれたなと思う。
他にもかっこいいシーンはあるのだが、やはりこの日一番話題となったのは石橋の涙だろう。
試合終了後、話題は石橋の涙のシーンで持ち切りとなった。
感動の共有・システムの是非・入れ替え候補の推測… 話題は多岐にわたったが、このシーンが多くの人の心を打ったことは間違いない。
インタビュアーの松本が涙したのは、親友の岡田が初勝利を上げて以来ではないだろうか。
意外だったのは、あの冷徹無情な麻雀ライター福地誠氏も、
https://note.com/fukuchimakoto/n/n358955d68b2d
>これは何回見てもこっちまで泣いてしまうなあ。
>この石橋インタビューって、Mリーグ始まって以来、最大の名シーンじゃなかろうか。
と感情を揺さぶられていたことだ。
かくいう私も、この原稿を書くために何度も動画を見ているのだが、そのたびに泣いている。
なぜ石橋の涙は多くの人の心を打ったのか。
石橋の最終戦を振り返りながら考えていこう。
この戦いを迎える前のポイント状況はこちら。
残り2戦を残し、4位フェニックスとの差は43.3pt。
1着1着・1着2着… 場合によっては1着3着でもファイナルへ進める。
つまり、1戦目はできれば1着、そして最低でも3着というのが石橋に課せられたミッションだ。
控室で集中力を高める石橋。
もしPiratesがセミファイナルで敗退することになれば、ルールによって来期は入れ替えをしなければならない。内部では誰が入れ替え対象になるかは全く語られていないものの、この4年間で一番成績を残せていない自分が対象になる可能性が高いことを悟っていたのであろう。
つまりこの半荘、石橋はPiratesの未来、ひいては自身の進退をもかけて挑んでいたのだ。
その石橋に、東1局いきなり試練が訪れる。
親の滝沢からリーチを受けた一発目。
自身も赤赤のテンパイが入る。
しかし切らないといけないのはドラの!
いきなりの分水嶺に立たされた石橋はどうする?
「リーチ」
石橋は、さほど迷わずにドラを横に曲げた。
滝沢の捨て牌を見てみよう。
変則手が臭う捨て牌だ。
イッツーや三色のペンやタンキのチートイツ、それにから打など、当たるケースはいくらでも思いつく。
しかし石橋は躊躇せずに踏み込んだ。
言葉にすると簡単だが、チームと自身の未来をかけた東1局の親リーチの一発にドラを切る瞬間、どれだけの覚悟が必要だったろうか。
激しいめくり合いの後…
20004000のツモアガリ。
これまでの四年間、石橋はこういったファインプレーを多く見せてきた。
たとえばマンガンのリードをジリジリと詰められてきた南2局4本場。
下家・松ヶ瀬のなにやら高そうなリーチに対し、→と連打して形式テンパイを取った。
特には松ヶ瀬の捨て牌に1枚もマンズがない。