【 #神域リーグ 第9節第26試合観戦記】 切らなかった5p 繋がった意志 最強AI鴨神にゅうが目指したモノ【文 #後藤哲冶 】

この放銃にはアキレスの応援配信では当然悲鳴が上がり。

これはチームが違うアトラスの応援配信なのだが。

「もうどうすりゃいいんだこんなの!」
「救急車!救急車呼んで!」

阿鼻叫喚。
敵チームであるはずの白雪レイドをも震撼させ救急車を呼ばせるほどの多井の不運。

麻雀の闇を知る雀士は、どうやら闇の気配に敏感らしい。

しかしこの局は踏み込んだ因幡も見事。
【9マン】からの仕掛けはなかなかトップ目からだとやりにくい。
しかし自分が、チームがおかれた現状を理解してリスクを承知で前に出た。

その打ち回しが、見事にハマったのだ。

南1局
因幡の勢いは衰えない。

素直に育っていく手牌をしっかりと伸ばしきり、リーチしてツモ。
そして裏1。
今までの辛い展開が嘘のように、因幡の想いに牌が応えてくれる。

南1局1本場、ここはようやく多井が因幡とのリーチ対決に勝ち、5200のアガリ。

勝負は南2局へ。

親番が落ちても、因幡が攻めの手を緩めることは無い。

因幡から放たれた、4巡目のリーチ。

これを受けて困ったのは、親の鴨神だ。

現状首位であるアトラスよりは上の着順ではあるが、それだけでは駄目。
鴨神が欲しいのはトップだった。

「押すか……! チーム優勝……!」
「押したくないけど押すしかない……!」

鴨神は頻繁に「チーム優勝」という言葉を発していた。

自分の手は赤もドラもなく魅力が無い。
相手はトップ目で、ここで放銃に回ると3位はおろか放銃打点によってはラスまで見えてきておかしくない。

鴨神が感情の無い自分の成績だけを優先するAIであれば、すぐにオリに回っていただろう。
けれど違う。鴨神にゅうは違う。

しきりにチーム優勝という言葉が出てくる鴨神には、間違いなく「熱」があった。
勝ちたいという想いがあった。

必死に粘る打【6マン】
【8マン】が自分の目から全て見えていてノーチャンス。
【4マン】が宣言牌で【4マン】【4マン】【5マン】から【4マン】を切ってリーチの場合は【6マン】は当たり得る牌だが打ち抜いた。
そもそも因幡のリーチはターツ選択を挟んでいない早い巡目のリーチ。

宣言牌が手牌に絡んでないことも大いにある。

【8ピン】も押していく。
これは単純に無スジの牌だが、【5ピン】【8ピン】をどっちも使い切るルートはほぼありえない。
そして【8ピン】を通せれば【5ピン】も後に少しだけ切りやすくなる。

ギリギリで鴨神が足掻く。
最強AIが、毎巡脳内で必死に精査し続ける。

全てはゼウスのチーム優勝のために。

15巡目。
いよいよ巡目も残り少なくなった。
この手牌。もちろん一番広いのは浮いている【5ピン】打ち。
【2ピン】が通って【5ピン】は中筋になった。

ソーズは全く通っておらず、【8マン】通ってはいるものの、チートイツのイーシャンテンが消えてしまう。
テンパイを目一杯に受けるなら打【5ピン】
そんなことは鴨神も十分わかっている。

しかし鴨神は【8マン】を選んだ。
迂回。時間はない。それでもこの手から【5ピン】を打つことは、鴨神はしなかったのだ。

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