しかしこの日の多井はここからとことん厳しい展開に見舞われる。
親の因幡からリーチが入って、自身には
が。
は親の現物で、脇からのアガリも期待できる。
鴨神が
を合わせたことで、
が3枚見え。
はワンチャンスになった。
これらの情報を合わせて、多井の選択したのは
切り。
これが。
因幡のリーチに突き刺さる。
リーチ一発ドラ1。7700は大きな先制パンチ。
是が非でもトップを持ち帰りたいのは、ヘラクレスも同じ。
第25試合でトップをとった勢いそのままに、因幡がリードを奪った。
続く東1局1本場はルイスのリーチに全員が対応し、流局。
東2局へ。
これは多井が因幡のリーチを受けた11巡目の手牌。
……一体誰がこの
を止められるのか?
いや、むしろこの
は止めるべきではないとすら思う。
トップが欲しいラス目のこの状況で、こんな勝負手が次いつ入るかもわからない。
こんな
は、止めていられないのだ。
即座に打ち抜き、因幡へ5200の放銃。
しかしこれは、まだ多井に降りかかる不運の序章に過ぎなかった。
続く東3局。
勝負をかけた多井の親番の仕掛け。
急所が鳴けて親の満貫がすぐにでも完成しそうだったが。
多井の鳴きに臆することなく鴨神が先制リーチを放つ。
鴨神にゅうを知らない人のために書いておくが、鴨神にゅうは麻雀が上手い。
鴨神はAランクの選手なのだから、何を当然なことをと思うかもしれないが、そう単純な話ではない。
鴨神はネット麻雀で高段位者、つまりは強者との麻雀に打ち慣れている。
同卓しているルイスや因幡にはない、圧倒的な対局経験が、この麻雀AIの脳内には大量に蓄積されているのだ。
その経験の中で、多井のような後が無い立場に立った強い打ち手が、リーチに対して親番で押し返してくることを理解していた。
牌を選ぶ力だけでなく、状況を把握する能力も高い。
むしろそれが無ければ、麻雀AIの異名をとるには至れない。
無情にも多井のところにやってきた
が鴨神のリーチの当たり牌。
開かれた手牌は、ドラ2内蔵の充実のメンタンピン。
きっちり裏を乗せてこれを跳満に仕上げてみせた。
このアガリで、なんと多井がハコ下に。
百戦錬磨の打ち手でも、こんな事態に陥ってしまうのが、麻雀の恐ろしい所。
東4局
多井の不幸を象徴するかのような展開がこの局に待っていた。
8巡目。ラスに沈む多井にタンヤオドラ1のテンパイが入る。
一見三色への手変わりや、ピンフへの変化を待ちたくなるところだが、
が3枚見えで三色が厳しく、
がポンされていてピンフ変化も乏しい。
そしてむしろ
がポンされていることから、マンズ中頃の場況が悪くない。
多井はさほど時間を使わずこれをリーチ。
前述した私の愚考など、多井にかかれば一瞬で把握できる。
そしてこのリーチの![]()
が、山に3枚。
バッチリ残っている。
多井はこの時、3副露の因幡の手牌について自配信でこう語っていた。
「![]()
シャボありそう」「これで
掴んだら笑おう」
因幡の仕掛けは見た目だけだと役が無い。
となると役牌が手の内にあることが濃厚で、残された役牌は
と
のみ。
そう、言った直後の事。
きりぬき動画が上がったら絶望的な効果音がつきそうな牌がやってきた。
もちろんこれが因幡に突き刺さる。
この東はルイスが1枚抑えていてラス牌だった。














