小さな積み重ねに、夢をのせて── 頼れる船長・小林剛が選んだ航路の先に待っていたモノ【Mリーグ2022-23観戦記10／7】担当記者：後藤哲冶

「１６００は２５００」

ボロボロの海賊船が、少しだけ前に進んだ。
小さな一歩で良い。前に進んでさえいれば。

小林の貫く姿勢は、微塵も変わっていない。

そうして持ってきた、南３局の親番。

小林は６巡目にこのをチー。
４５６の三色、タンヤオ、ピンズの清一色と様々な手役を見た鳴きだ。

次巡、持ってきたで狙いをタンヤオに絞る。
ドラが引けなければ１５００点と寂しい点数だが、小林は迷わない。
この小さな積み重ねがパイレーツを幾度となく救ってきたから。

しかしまたしても、サクラナイツ堀が立ち塞がる。
メンホンチートイツを見事な手順で仕上げて強烈なリーチ。

それでも小林は進むことを止めない。
次巡、堀から出たをチーしてテンパイで追い付く。
僅か１５００点。相手は１２０００点から。
それでも麻雀は、先に当たり牌に辿り着いた者が勝つゲームだから。

ドラのを引いて待ちへと変化した小林が、堀から見事に打ち取る……！
打点は高くない。それでも値千金のアガリであることは間違いない。
堀の大物手を潰して、自身の親番を継続。
親番を、望みを繋ぐ。

１本場は東城のリーチを掻い潜りテンパイを入れて流局。
繋ぐ。小さな積み重ねで細い細い糸を繋いでいく。
薄暗い航路の先に、光があると信じて。

そしてやってきた、２本場。

４０００は４２００オールをツモり上げる！
満足の行くテンパイ形ではなかったものの、待ちのは悪くないと思っていただろうか。
見事に３枚山のシャンポンをツモって、一気に２着に躍り出た。

小林以外の打ち手で、この２本場に辿り着けた打ち手がどれほどいるだろうか。
細い細いルートを進み切って、海賊船は見事に宝へとたどり着いた。

しかしこれを受けて３着になってしまった堀も黙っていない。
南３局３本場。

小林が仕掛けて、でのみアガれるチャンタのテンパイ。
そして放たれたドラのを。

堀がポン。
役牌かでアガれるというダブルバックの仕掛けだ。

６巡目に堀がペンを引き入れてテンパイ。
出ていくのは、か。

ここで堀視点を見てみよう。

確かに小林が鳴いている牌はチャンタの牌だが、そこまでチャンタに見えるだろうか？
チャンタに決め打つ進行なら、最後に出てきたドラのは少しおかしい。もっと早く手から離れていてもよさそうだ。
だとすると本命はチャンタよりも役牌バックが濃く見える。
その場合、とは自分が２枚持っていて、残された役牌は東。は生牌だ。小林に暗刻で入っていてもおかしくない。

つまりは一概にが危ないと言える河ではないのだ。

それでも堀はを切った。
もちろんが小林にチャンタで当たるケースも考慮したと思うが、それ以上に自身の手からが出てくることが他者にとって不自然すぎる。
役牌バックを見切られ、白や中を止められてしまう方が痛い。
堀らしい、自身のアガリ率を考慮した選択。

そして直後。