「3000・6000」
静寂の中で瀬戸熊が申告をした。
リーチ・ツモ・ピンフ・一通・裏1
昨年のオーラスに続く逆転劇。
迎えたオーラスでは
2着の大介と4400点差が付いている。
その大介が手を作るも、あと1牌が及ばない。
最後、友添の手番。
感極まっているようにみえる。
何を切っても同じだが、舞台を汚してはいけないという思いの裏に、負けた悔しさと、もう終わっちゃうんだなという寂しさが入り交じる。
こうして友添が、最後の牌を選び流局。
瀬戸熊最強位の連覇となった。
昨年は全員が涙した場面だが、今年は
対局直後に盟友の多井が泣いていただけで、
終始和やかなムードに包まれていた。
「昨年は苦しかったけど今年は楽しく打てた」
と語る瀬戸熊。
「その麻雀の楽しさを多くの人に届けられたら嬉しい」
と続け、最後を締めた。
気迫の伝播
──我思う。
麻雀における「強さ」とはなんなのか。
4人ががっぷり組んで叩き合う決勝を見て、少しわかった気がする。
麻雀は総合力だ。
基本を抑えた上で、人間力だったり姿勢だったり気持ちだったりが試される。
その上で楽しめるようなくらい余裕ができた時に、多くのものが見えるのではないだろうか。
連覇ということで、昨年書いた文章をそのまま読み上げる。
今回も全く同じことを感じたからだ。
麻雀は運ゲー。
麻雀はクソゲー。
プロだってそう思う瞬間はある。
でもなぜその運ゲーで
なぜその1牌の後先で
打つ者の魂を震わせ、見る者の心を打つのだろう。
いい大人がランダムに置かれた牌のやりとりで、涙を流し、手を震わせる。
普通に生きていたら、絶対に味わえない非日常が、麻雀には存在する。
瀬戸熊の気迫は、会場内だけでなく、全国に伝播した。
プロアマ問わず、麻雀打ちの心を打ち、多くの人が涙を流したのだ。
私もその1人である。
麻雀ってなんて素晴らしいんだろう。
最強戦ってなんて感動的なんだろう。
多くの人が瀬戸熊の無言の背中を見て、あの舞台に立ちたいと思ったはずだ。
最強戦はあなたの挑戦を待っている。
麻雀ブロガー。フリー雀荘メンバー、麻雀プロを経て、ネット麻雀天鳳の人気プレーヤーに。著書に「ゼロ秒思考の麻雀」。現在「近代麻雀」で戦術特集記事を連載中。note「ZEROが麻雀人生をかけて取り組む定期マガジン」、YouTubeチャンネル「ZERO麻雀ch」