瑠美のて3枚、村は一枚減っ上の待ちは2枚、黒沢の待ちは3枚山に残っていた。36枚の内8枚が誰かの当り牌ということになるため、ほぼリーチ者の放銃、ツモアガリでの決着となるかに思われたが…
ここで事件が起こる。
村上の先制リーチを受けてから現物のみを切っていた渋川が、なんと四暗刻のテンパイを入れたのだ。
ノーマークだった4番手が現れ、実況席は大混乱となる。
しかし、四暗刻のテンパイを取るためには3件リーチの誰にも通っていないを切らなければならない。そしては村上の当り牌だ。
全体の場況はこちら。
ここで冒頭の場面に戻る。あなたは何を切りますか?
渋川は長考に入る。一応打でもテンパイは取れるが、も通っていないため、四暗刻を狙っての勝負かを切って迂回するかの二択だろう。
このが3件リーチどのくらい当たるのか考えてみよう。
まず村上のリーチは、全部で18パターンあるリャンメンのうち通った筋を消去すると残りは8パターンある。瑠美は10パターン、黒沢は9パターンだ。
がリャンメンで当たるケースは村上にはの1パターン、瑠美にはと2パターン、黒沢にはの1パターンが考えられる。
この3人のパターンを合わせると、がリャンメンに放銃する確率は約38%程度となる
1 - (7/8 × 8/10 × 8/9) =0.38
もちろん愚形待ちの可能性を入れれば数値は変わると思われるが、ざっくりと計算すればこんな感じだろう。
放銃率38%と聞くと「半分以上通るじゃん!」と思う人もいるかもしれないが、ポイントとなるのは38%で失点(なので大体8,000点以上)が確定するという点だ。
仮にが通ったとしても渋川の点数が増えるのは、3件リーチをかいくぐりかを引き当てた場合だけ。しかも役満になるのは自身がツモった場合のみだ。
は山に1枚生きていそうだが、その一枚に全てを託せるのか…。
麻雀の選択において、極端な結果が含まれる選択ほど困難になる。
今回のように可能性は低いが大量加点が期待できるケースや、逆に大量失点の可能性があるケースだ。
サクラナイツ控え室でも意見は割れており、堀は「(・)どちらもある」、岡田は「3件リーチには無条件で押さない」と話していた。
参考URL:https://www.youtube.com/watch?v=JOgxj6h-JdI
約90秒間、渋川は長考の海に潜った。
導き出した答えは…
四暗刻を狙う打だった。
これが村上への放銃となる。裏が一枚乗って8,000は8,900点と供託2本の加点で村上が2着に浮上する。
打となった要因は2つで、1つはもちろん四暗刻というリターンの大きさ。
仮に32,000点の加点となればこの試合のトップもほぼ決まり、実に80ポイント近くのプラスが見込まれる。これは34,000点のトップの約1.5倍で、まだ中盤戦といえどもチームにとっても非常に嬉しい。
そして2つ目は試合がまだ東1局である点だ。
もし役満が決まれば東1局でもほぼ試合を決することができるが、が当り8,000点の放銃となっても、挽回する機会はたくさんある。
仮に南3・4局など終盤で同じ状況だったら、渋川は打を選択していただろう。
解説の朝倉プロも話していた通り、色々書いてみたが正直どの選択が正しいのかわからない。
ただ極限の状況でも攻めの姿勢を崩さず、不調が続くチームの突破口を見出そうとした渋川の選択に、胸を打たれたMリーグファンも多いのではないだろうか。
この満貫放銃の後、渋川はアガる機会に恵まれず4着となる。
東場はトップ目瑠美の躱し手が見事にハマり局を進める。
南場では黒沢が親番で追い上げるも瑠美までは届かず。
オーラス、渋川の親番は3着確定に向け仕掛けを入れた村上に瑠美がアシストの満貫差し込み。見事個人2連勝を決めた。
渋川曰く「第一感はリーチだった」とのこと。
四暗刻の局もそうだが、アガリが見込める局がほとんどなく、アガリ0回で無念のラスに沈んだ。
渋川の4着により、サクラナイツのトータルスコアは-200を下回った。
順位は変わらないものの7位ドリブンズがすぐそこまで近づいている。
苦戦が続くサクラナイツ。しかし昨年王者がこのまま落ちていくとは誰も思っていないだろう。
渋川の爆発力が復活のきっかけとなるか。
運命の後半戦が始まろうとしている。