巡目が進んでタンヤオのテンパイになっても、本田はを留めて必死に耐える。
確かに小林の河はマンズの下が危険である。
ここで放銃してオーラスになっては、本田のここ数局の目論見が水泡に帰す。
自身が作り上げた延長戦のようなラス前を、本田は丁寧に丁寧に繋ぎ止める。
13巡目──、小林がダブドラのを引いて、カンテンパイからカン待ちに変化させる。
これに合わせる形で本田もを処理。
小林には、打たぬ。ケイテンではあるが、ノーテン罰符は死守する。
そして本田の17巡目──、
前巡を引き入れてタンヤオの役ありになっていたところに、ツモである。
テンパイ形は崩せない。
この局親の堀はノーテンなので、次のオーラス勝負のため、小林との点差は開かせたくない。
多井はオリており、多井と3000点差詰められるのも絶対逃したくはない。
テンパイ形をキープできるのは、かかだ。
小林にはが中スジ。
最終手出しはである。
本田が選んだのは、
ど真ん中の無スジ、ツモ切りである。
──通した。
小林の待ちはカンだ。
小林がテンパイから手変わりでを切ったならば、
やはりからの、からの、からのなどのパターンが多くなる。
また自身からもが3枚見えており、この状況で選ぶならばドラ跨ぎの無スジだろうが、ど真ん中だろうが、
を切るのが最善に見える。
こうして本田は5本場の最終局を多井と3500点差、小林と5400点差で迎える。
積み場も多いので2着までの条件は最初の点数からすれば劇的に緩和されていた。
しかし──、
このオーラスは、小林へ堀の早い差し込みがあって、決着。
本田は、4着だった。
私はこのとき、配信のコメントなどで、本田のラスを揶揄するものを見て、残念な思いをしていた。
堀へのマンガンは避けられた、実力者3人に囲まれたらやっぱりラスか、
など結果だけを捉えてまだ2年目の本田のことを、軽視する意見が気になった。
正直なところ、麻雀の観戦というのは内容の細かい部分が一般視聴者に伝わりにくいので、
もどかしい気持ちになることがある。
これは麻雀配信の課題ではあるし、選手を守るためにも、観戦の面白さを広げるためにも、
私たち周囲の人間ができることも少なからずあると思う。
もちろんこの日のように、
今日まで不振だった堀の連闘と連勝はエンタメとしてわかりやすく、
こうした勝利に人々が熱狂し、盛り上がるという現実は自然なことだ。
しかし、本田がマンガン放銃からもリーチのみで親にぶつけての局消化を拒否したことや、
そこからの局数を引き延ばし、徐々に上との点差を詰めていったこと、
仕掛けた小林への対応で7枚目のを仕掛けざるを得ない状況でも、
早々のケイテンながら危険なを打たずに粘り、
最後の最後も中スジなど追わず、読みでを通したことなど──、
長い長いラス前で、本田の見せてくれた内容は本当に素晴らしかったと思う。
だからこそ、結果で伝わらなかった選手の踏ん張りや努力、
報われなかった渾身の麻雀を埋もれさせることなく、
私たちのような立場の人間が残すことができたらいいと思う。
今年最後の雷電の試合。
本田はラスだった、それでも。これからの雷電を大きく期待させるものだった。
胸を張って──、そして来年からも強く戦って欲しい。