歓喜か絶望か 挑むは村上淳 一牌の後先に、 魂を燃やせ【Mリーグ2022-23観戦記1/20】担当記者:後藤哲冶

次巡、望外のドラ引き。

一瞬村上が手牌の【4マン】に手をかけて、戻した。
打牌は【4マン】で決まっていただろう。それでも手を戻したのは、おそらく仕掛ける牌を考えていたのではないだろうか。
ドラからならポン?  ピンズの染め手に向かった滝沢を考えれば、【3ピン】も苦しいか。
様々な思考が村上の頭を駆け巡っている。

全ては、最善手を選び抜くために。

【南】を引き入れてチートイツドラドラテンパイ……!
村上は1秒とかからずに【4ソウ】を縦に置いた。この選択も決めてあったのだろう。
ソーズの下は全体的に安く、【2ソウ】は多井の現物でもある。

それも、【2ソウ】が通ってから2巡しか経っていない。
今なら、全員がこの【2ソウ】をツモ切る。村上はそう思ったはずで、そしてその読みは当たっていた。
全員が【2ソウ】を受け入れられる手牌ではなく、今なら全員がツモ切るだろう。

しかし【2ソウ】が姿を現さないまま、多井からリーチがかかる。
【5マン】【8マン】待ちの、ドラ1リーチ。

そのリーチ一発目に村上が持ってきたのは、【3ソウ】
ソーズ下は悪くない。現物の【2ソウ】を切って、【3ソウ】単騎にする選択肢もある。

しかし村上はツモ切った。
多井の手出し【1ソウ】【2ソウ】が見えていないはずがない。現物とそうでない牌の差を、村上ほどの打ち手が理解していないはずがない。
ここは、ダマのまま【2ソウ】に願いを託す。
出ても6400は大きな加点で、ツモれば満貫だ。

想いを込めて、村上が手を伸ばした先に――

【2ソウ】が眠っていた!
ラスト1枚をツモり、多井のリーチを交わして値千金の2000、4000。この半荘初めての満貫以上のアガリは、村上の手によってもたらされた。
自身今季初トップをチームへ持ち帰るために。

村上がトップで勝負は南場へ。

しかし南場も、東場と同じように、小場で局が進んでいく。

南1局は小林が1000、2000のツモアガリ。役牌の【北】を鳴かず、メンゼンで仕上げた。
これで小林がもう一度村上を交わして微差ながらトップ目に。

南2局はリーチをかけた親の滝沢の1人テンパイで流局し、1本場へ。

その南2局1本場は、多井が【中】を鳴いてすぐに局を終わらせることに成功する。
現状ラス目で1000点を受け入れたくない多井だったが、この手は1000点以上にならないと割り切り、そして最速でアガリ切った。
赤引きでの500、1000はむしろ僥倖と言えるだろう。

ジリジリと、全員が2万点台での攻防が続く。
誰も先に行かせない。誰も出遅れない。
息詰まる熱戦は、終盤へ突入する。

南3局

最初に仕掛けたのは滝沢。
9巡目ということを考えれば苦しい手牌であることは間違いないが、それでもこの状況で他家にアガられることが一番良くない。

オーラスを見据えれば、たとえ2000点だとしてもここでアガる意味合いは点数以上の価値を持つ。

この仕掛けを見て、くっつきのイーシャンテンが入っている村上の額に汗が滲む。
早くテンパイしたいのに、ツモが効いてくれない。この形になってから、実に4巡が経過していた。

ドラドラの多井も仕掛ける。【6マン】のポン。
この局面での3900はあまりにも大きい。

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