ゼウスがドリブンズを救うまで　鈴木たろうが夢を見せるまで【Mリーグ2022-23観戦記1／28】担当記者:後藤哲冶

「夢を見てしまいました」

たろうは試合後にそう口にした。

けれど、ファンは少なからずたろうの「夢を魅せる」選択に惚れ込んでいるのも事実。
今回は実らなかったが、その姿勢はたろうの長所なのだから。

この痛い放銃を受けて尚、たろうの心は微塵も折れてなどいなかった。
直後の東４局。

堀の先制リーチ。
待ちはだ。堀からしてみれば、この待ちで先制リーチを打てれば上々。

ドラドラのたろうがここからをプッシュ。
堀はピンズを→と外しており、単純ターツには少し当たりにくい。

次巡に引いたも押した。
まだ無スジで通っていない牌も多い。前局は放銃へと回ったが、怖気づいてなどいられない。
たろうは、ドリブンズはトップが欲しいのだ。

親の多井も来る。
ピンフ赤１ので追っかけリーチ。

たろうも追い付いた！
しかし出ていくのは危険牌の。だが、ここまで押したたろうに後退の２文字は無い。

「追い付いたけどこれはちょっと（待ちが）……」

と解説の朝倉プロが言い終わるよりも早く。

「リーチ」

たろうは力強く宣言。
待ちが悪くても、多少分が悪くても勝負に出る。

一つ一つのアガリを取りこぼすことができない所まで来ているのだ。
待ちが悪くてもトップに繋がる可能性があるのなら。

たろうは食らいつく！
堀から捉えて8000のアガリ。

なんとかトップへの可能性を繋ぐアガリを果たしたたろう。
が、放銃に回った堀がその僅かな希望さえも叩き折る。

南１局

よもや字一色という多井の副露を交わしきり、4000オールですぐに点棒を回復すると。

続く１本場、小林のホンイツと、追いすがるたろうの追っかけリーチを振り切り、リーチツモドラ３赤の6000オールで一蹴。
わずか２撃で堀が大きなトップ目へと躍り出た。

苦しい。
それでもまだ、親番さえあれば。
今の堀がそうだったように、親番は大きな加点のチャンス。
トップも親番がある限り――

迎えた親番。
たろうとドリブンズに叩きつけられた現実は、多井の２巡目リーチだった。

当然のように一発で掴まされたで放銃に回ったたろう。
そしてその悔しさとも諦観ともわからない感情を整理する間もなく。

オーラス。
絶対にただでは沈まない男・多井の4000オールで――たろうはラス目に立たされた。

この4000オールの直前、たろうには３位を確保するテンパイを入れることもできた。（直前に打たれたをスルーしている）
しかし、たろうはその選択肢は取らなかった。いや、取れなかった。
チーム状況が、３位確定のアガリを許してはくれなかった。

オーラス１本場