遠かったその背中、
遂に視界に捉えども……
村上の前に立ちはだかった、
「無慈悲なオーラスの女王」
文・渡邉浩史郎【金曜担当ライター】2023年1月27日
第1試合
東家:白鳥翔(渋谷ABEMAS)
南家:岡田紗佳(KADOKAWAサクラナイツ)
西家:瑞原明奈(U-NEXT Pirates)
北家:村上淳(赤坂ドリブンズ)
Mリーグもいよいよ後半戦だ。下位チームにはこれからのすべてが条件戦、そんな一日の始まり。
この日も村上は苦しんでいた。
トップが何よりも欲しいチーム事情・個人事情。
長らく見放されていたトップの背中は【東2局1本場】、岡田の6000オールツモでまたも遥か遠くに霞んでいった。
村上の試練は続く。【東2局2本場】、再びの岡田の先制リーチ。待ちはだ。
リーチを受けた瞬間の村上の手牌、赤赤ドラの超勝負手。
しかしを仕掛ける前提だと一転してピンチに。ポンをするなら安全牌のドラを切っての赤赤3900よりも、通っていないを押し通しての8000に魅力があるからだ。
現状通っている筋も少ない状況。一筋開拓でのマンガン聴牌は十分見合うと判断してもおかしくない。
面前聴牌ならリーチの分で打点を補えるため、切りで放銃回避の道もある。
祈るように引いた牌は……
! これなら瞬間はが出ないうえに、スライドも可能だ!
巡目こそかかったものの、聴牌! しかしここでも神は村上に選択を迫る。
まずはとどっちを切るか。
を切ればの上が現物・一気通貫もつく。しかし肝心かなめのが三枚切れ。おまけに切りだすはと二筋に掛かっている、いわゆる両無筋だ。
を切れば一筋で済むが、最大打点と一枚のの分の待ちを失う。
さらにはリーチかダマか。既にマンガンあるので打点的には申し分ない。
リーチと行けばこの一局で岡田をまくってトップ目に立てるチャンスが生まれる。
一方でダマにすれば脇からがこぼれたり、後の危険牌で降りの選択ができるというのが一般的な理由。
村上の決断は……
を切って、リーチだ!
切りリーチに至った思考を簡単に言語化するなら
①ベタ降りしているように見える白鳥・瑞原からは、自分がを打ち抜いた時点で甘い牌は切らないだろう。
②前々巡の岡田のにベタ降りの二人がを合わせていない。押している自分の裏筋であるは通った巡目に処理しておきたいところのため、今切られないということは持ってなさそう。岡田の第一打がのため、残り一枚は山の中か。
③ダマテンにしたところで岡田のリーチに回して聴牌を取り切れる無筋はを引いての切りスライドのみ。
④だったら山にいそうなも待ちに含めて捲り合いに持ち込み、あわよくばこの手を跳満倍満のアガリにして一発逆転の抽選を受けよう。
といったところだろうか。
そんな村上の、決死の選択を……
あざ笑うかのように、そこに偶然は置かれていた。
打点こそ2600点の放銃だが、このチャンス手がつぶれたことが何より痛い。
思わずがっくりとうなだれる村上。
【東2局3本場】でも再びチャンス手が入るが……
何も入らない・聴牌すら取れないの地獄モード。
しかし村上は諦めない。その長い競技人生の、底ともいえるような絶望的な不運・巡りあわせ。それを「そういうもの」と受け入れてこその麻雀、「オカルトバスターズ」なのだ。