形はいいが赤もドラも1枚もない。
自分の手牌価値と相手三者との相対バランスを考えたとき、
・重ねたいという気持ちでを残す と、
・ドラを持っていたり、ホンイツやトイトイなど打点を作りに来る相手に重なる前に捨てる
を天秤にかけ、後者を選んだんじゃないだろうか。
逆に東場の親番ではを残す選択をすることが多いだろう。
他にも捨て牌を派手にしないことや、の保持率を惑わす効果などもある。
こうやって局面で打牌が違うから麻雀はおもしろい。
4巡目にを引き打点がアップしたのも嬉しいが、ドラ7枚の内、まずは1枚相手の手に渡らなかったのも嬉しい要因。
ターツがオーバーの形になり、対子も4組。
ペンチャンの部分を払うのは必然に見えるが、から打ったのは次にドラのを引いたら今度はやり直す気持ちもあったからだろう。
形と打点の折り合いをギリギリまでせめぎ合う繊細な一打が光る。
『手順マエストロ』
この異名通りである。
さらに次巡、を引き入れパワーアップ。
これならを鳴いてもどちらの赤も使い切れれば十分すぎる加点になるだろう。
を引きチートイツのイーシャンテン。
メンツ手を保留するならピンズのリャンメンを残す選択もあるのだが、すぐテンパイする牌の精査も鍵となるチートイツならば、山にいそうな牌を探していきたい。
第一打の萩原、第三打の日向を見て、は山にいる可能性が高い。
は赤、も日向の第二打で周りが何も切れてないよりも優秀な牌に見えることからを選択。
もちろんを引いたらまたメンツ手にも戻るルートも内川の構想に入っている。
2枚切れのを引いてのメンツ完成。これで少し難しくなった。
チートイツを1番手に狙う役と見た時にこのは切る一手だからである。
熟考の末、内川が選んだ牌は
!!
この決断の真意はインタビューの時に松本さんが聞いてくれていた。
そこには内川の研ぎ澄まされた選択理由があった。
『トイツ手を狙うなら2枚切れのはいらないんですが、まだメンツ手の保留も出来ますし、チートイツになるならすでに赤があり、を切ってもリーチなら9600で打点も十分。
2枚切れのが手牌から打ち出されればチートイツ感も薄れるし、単騎なら打っておけば出アガリも期待できる待ちにもなるので』
と。
この局、アガリの価値が高いからこそ、チートイツ一本にはせず、を鳴くルートも残し、チートイツの最終的な待ち候補を強くする為の先々を見た切りであったのだ。
發から打ち出した局面に応じた打牌がここでも発揮されていた。
次巡にドラのを引きを切りチートイツに絞っていた内川。
そこに2着目伊達からリーチが入る。
待ちは。
さぁ勝負所。
物語は佳境へ
因縁のを引き入れ、かを切ればチートイツ赤のテンパイ。
伊達は2着目でライバル。
加えて、この手をアガればトップはかなり手中のものになる。
これだけで押す材料は揃ってるように思えるが果たして‥?
打
内川の選択はどちらも打たずにオリ。
これもインタビューで語ってくれていた。
『まずマンガンを放銃してしまえばもう無理・・でもマンガンツモられる分にはまだマンガンツモり返せばトップのルートがある。ならばこのドラ単騎と裏筋のの選択を迫られた時にそもそもチートイツだしな・・』
と。
ちなみに対子落としでじゃなくを選んだのはで放銃が嫌だからとかではなく、自身からが3枚見え、が2枚見えで、裏ドラ表示牌にいる可能性が低いのはなのでだと話してくれていたこともそっと書いておこう。
極限の戦いの中でも内川の冷静さが際立つオリになった。
そしてこの局は──
伊達の1人テンパイで流局。