千両役者、内川幸太郎 桜花乱舞の剣劇──!【須田良規のMリーグ2022-23セレクト・2月21日】

セミファイナルボーダーを狙うライバルに引きずり出された、痛恨の放銃。

しかし内川は、手傷を堪えて立ち上がった。

オーラス、内川は27600点持ち、東家たろうが31200点持ち。その差は3600点だ。

この【發】を一鳴き。
これを動く者がどれだけいるだろうか。

パッと見は1000点。
内川は、トップを諦めて2着を狙ったようにしか思えなかった。

だがたろうは一人ノーテンにはできないため、まずはアガリに来ることが予想される。
たろうからリーチ棒が出るのなら──、内川は400・700でもいい、2000でもいい。
出なければ、赤1枚引いてテンパネさせての700・1300だ。

1メンツもない、アガリの果ても想像できない手牌で、内川は抜き身で踏み込んだのであった。

そして内川には、一つの構想があった。

【6ソウ】を重ねて、1枚切れの【8ソウ】切り。
狭くしている、その真意は掴めなかった。

【8ピン】を重ね、打【5ピン】で完全に内川は体勢を構えた。
ピンズ周辺の警戒をそらすなら、ここで【5ピン】を打つしかない。

これがあったか──。

まずはポン材を残したテンパネの400・700ルート、
そしてその果てにある逆転の剣技は、トイトイだったのである。

もちろんテンパイ前に【5ソウ】もツモ切っていて、トイトイの決め打ちに当たり牌は定まりようもなく、
高宮が【6ソウ】で5200放銃。
文句なしのトップ返り咲きだ。

今期確かに苦しい状況にあるサクラナイツの円卓の騎士たち。
しかしその一角で、内川は思考力と決断力の刃を研いで、チーム躍進の機会を狙っていた。

優の親を落とした【南】打ち、
いったん窮地に陥ったラス前の放銃、
そしてそれが演出であったかのような、唯一にして最速の、トイトイ捲りの終劇。

サクラナイツの花形役者が、停滞するチームの鬱積を──、
晴れやかに吹き飛ばしてくれた瞬間だったのではないだろうか。

 

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