千両役者、内川幸太郎 桜花乱舞の剣劇──!【須田良規のMリーグ2022-23セレクト・2月21日】

前年度優勝チーム、KADOKAWAサクラナイツは目下セミファイナルボーダーを争う位置にあり、
麻雀というゲームの危うさ、難しさを表しているように思う。

ファンの抱いている今一歩抜け出せぬもどかしさを払拭するのは、
やはり選手たちの勝利、そして騎士らしく華々しい技のもたらすドラマであろう。

2月21日(火)第2試合南2局1本場で北家の内川幸太郎は37700点持ちのトップ目。

東家のU-NEXT Pirates鈴木優が28700点の2着目、
南家のKONAMI麻雀格闘倶楽部高宮まりは19700点持ち3着目、
西家の赤坂ドリブンズ鈴木たろうが13900点持ちラス目である。

点棒バランスとしては、下家にいる親番の優が9000点差で近いため、
優の連荘を避けたい状況である。

内川はこの配牌。9種9牌である。

どうだろう。よくあるトップ目のダメ元国士に向かう人も多いのではないだろうか。
チュウチャン牌を切り飛ばして、安全牌をため込む。
どうせまともなメンツ手は厳しく、予定調和の台本としてはありふれた筋書きだ。

しかし内川は、まず優の役牌である【東】から打ち出す。
手なりに進めるのか、とそのときは内川の意図を解さなかった。

内川は手が進んで、カン【7ソウ】をチー。
なるほど、確かに優の親を蹴るためにある程度はアガリを追うべきなのだろうか。

そして内川のここまで温めた【南】を、たろうがポンした。
このとき内川は、そのタイミングに内心ほくそ笑んだのである。
手がまとまって、たろうが鳴きやすくなった、絶妙の頃合いだ。

内川から【1ピン】もポンしてたろうがテンパイ、

そして高宮がリーチ。

当然内川はこの2枚目の【白】ポンテンもスルーでベタオリに入る。

内川の狙いは正にこれであった。

親の上家で国士進行をして、チュウチャン牌をバラ切りして鳴かせたくもない。
また、点棒のない高宮とたろうが、役牌を鳴けずに親を落とせない展開にもさせたくない。
自然な進行で、自分が引っ張った役牌をポンさせることができれば幸甚、
無理せず自分がアガれればそれも悪くない、というわけである。

優はリーチと仕掛けに挟まれて実質撤退を余儀なくされる。

そしてこの局は、たろうツモアガリ。

二番手の優の親は親被りで落ち、三者の点棒が平たくなった。
内川にとっては望ましい展開だ。残るは2局。

しかし次ぐ南3局に、追いすがるたろうが内川を搦めとった事件が起こる。

たろうはこの手牌、【8マン】をツモ切った。
確かに【赤5マン】まで強引に使うならそれしかないが、現状でもドラの【1ピン】【赤5ソウ】は組み込まれている。
【3マン】を切る方が自然かもしれないが──、この手順が意外な結果を生む。

たろうが残ったカン【6マン】でリーチ、それを受けての内川である。
チートイツテンパイではあるが、チュウチャン牌の無スジを押してさらに通っていないチュウチャン牌の単騎では、押すメリットはない。
もちろん降りたいのだが、ただ現物がない。

【8マン】が4枚見えで、内川は熟考の末、中スジノーチャンスの【6マン】を打ち出してしまう。

【3マン】切りのカン【6マン】というのはもちろん想定し得る待ちではあるが、
実際最初にたろう自らが【8マン】を打ち出しているのが利いてしまった。

【3マン】【5マン】【7マン】【8マン】から【8マン】を切る手順などあるのだろうか──、と誰しもが思うだろう。
たろうの切り順が【5マン】【8マン】【9ピン】【3マン】ではなく、【5マン】【3マン】【9ピン】【赤5マン】であったなら、【1マン】を高宮が通しているので打【4マン】で凌げた局面だった。

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