多井隆晴が見る、夢の先には何がある?【Mリーグ2022-23 インターバルコラム】文・後藤哲冶

堀は少し悔しそうに、【7ピン】を持ってきた。
【9ピン】を切っていなければ、ここでペン【3マン】でのリーチになっていた可能性が高い。
そしてその、数巡後――

堀の手に、【3マン】
真っすぐにそのまま進んでいれば、アガリだった牌だ。

こんなのは、麻雀でよく言われる結果論でしかない。
多井がリーチを打っていなければ、他の2名の打牌も変わっていて、仕掛けが入ってツモ筋が変わっていたかもしれない。
だから、ただのifだ。
けれど、あのペン【3ピン】を捉えて、最速でリーチを打っていなければ……この局の結果はどう転んでいたか全く分からない、ということだけは確か。

結局、この半荘は僅か3100点差で多井が逃げ切り。
紹介した局の他にも、数々の分岐があったこの半荘。
多井以外があの場所に座っていたとして、同じようにトップをとれていたかは、わからない。

この対局の後、冒頭で紹介したインタビューのシーンに繋がる。
試合が終わった後は飄々と受け答えをする多井だが。

対局中、あの【5ピン】【8ピン】リーチを打ち、山に手を伸ばすその時は、目の前の牌しか見えていないようにすら見える。
ここで決める。トップを掴み取る。
麻雀に全力を注ぐ、麻雀打ちとしての多井隆晴がそこにいる。

再び、普段の多井へと視点を移してみる。
多井は自身のYoutubeチャンネルでの雑談で、

「もう、欲しいのは(Mリーグ)優勝だけ」
「俺優勝したら、何が目標になるんだろうな?」

……これからのことや、麻雀界のこと。
多井は数多くの立場や責任を抱えている。

けれど、ひとたび卓を囲めば。
目の前の闘牌に全力を注ぐ勝負師が顔を見せる。

渋谷ABEMASでMリーグ優勝』

それが最速最強多井隆晴が今唯一欲する夢。

それを達成した先に、一体何が見えてくるのか。本人すらも、今はわからない。
けれど、この目標を達成しなければ、多井の麻雀人生は終われない。

――その夢の先を見るために。
誰よりも麻雀界の発展を願う多井が、チームの為、ファンの為、そして自分自身のために。

さあ、頂の景色を見てみよう。

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