吉田光太曰く、『龍』とはー
出アガリではなく、ツモれる待ち（ヤマにいる待ち）でテンパイをしているとき、右手に宿るもの。
龍が出ると必ずツモることができ、その際右手は龍のような動きになることが多い。
右手こそ荒ぶることはなかったが、先ほどの和了りには確かに龍が見えていた。
そして迎えた連荘、【南2局1本場】。
先制リーチは寿人。赤1の変則三面張でリーチに踏み切る。
同巡、仲林も追いつく！ 
暗刻の赤1！
勝負となれば出ていく牌は自身で暗刻にしている
の筋で、しかもドラの
。
42600点持ちの親番。固くいくならの暗刻落としで、残り2局で捲られないように祈るという選択もあった。この瞬間寿人に8000や12000放銃となったら目も当てられない。
しかし通っている筋も少なく、何より渋川との点差16000点は守っていてもセーフティリードとは言えない。出和了り9600、ツモってマンガンの聴牌はこの半荘の決定打となる。
仲林の切ったドラは、横に曲がっていた。
4”龍を継ぐもの”
なぜ仲林が吉田に見初められたのか。
こんなエピソードがあったという。
”まだ仲林がプロ入り前のこと、麻雀を打っていて、吉田が仕掛けて聴牌を入れているところに仲林は無筋を切って立ち向かっていった。
そして
の聴牌を入れてリーチ。当然吉田も一歩も引かない。仲林の一発ツモは……
、跳満のツモアガリ。それを見た吉田はこの世の終わりのような顔をした後、口を開いた。”
「お、同テンをツモられたのはお前が初めてだ、、、お前なら俺の龍を継げる」
「お前は麻雀プロになれ、俺を超えられるかもしれない」
当事者でない人々からすれば余りに荒唐無稽な話である。
だが実際に仲林はその吉田のカリスマ性に惹かれてプロの門を叩いた。
協会のA1まで駆け上がり、数々なタイトルを取った。確かに吉田の龍を継いだのだ。
そして今、当時からすれば考えられなかった大舞台。ありとあらゆるものを背負って仲林は戦っている。
「行けるよな、ケイ」
あの時と同じ、同テンの捲り合い。”龍を継ぐもの”のお前なら
簡単に超えてくれる！ 静かに置かれたそのツモ動作は、非常に丁寧なものであったが、
彼には、いや、パイレーツクルー達にも見えていたであろう。
圧倒、圧勝。昨日のラスを帳消しして余りある大トップをチームに持ち帰った。
トップインタビューでも触れられるのは龍のこと。
仲林は昼に龍と会っていたのだ。であれば龍の降臨は必然だったのかもしれない。
弟子として一番大事なのは「誰に教えを乞うか」。
仲林が教えを乞うた龍は今も大きな夢を持ち、弟子を応援すると同時に弟子の背中を追いかけている。最高の師匠であった。
それと同時に
龍が教えを乞われた弟子の方もまた、誰よりも師匠思いな、最高の弟子であったのだ。
lead to the next chapter…
日本プロ麻雀連盟所属・35期後期生。麻雀と着物と民俗学が大好きなプロ雀士。
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