「ちょっとくらい、欲しいんだ……」
もう着順アップすら厳しいかもしれない。
それでも少しでもポイントを持ち帰るべく、風見が奮闘する。
しかしそんな中で、因幡が既にテンパイを入れていた。
の待ち。
リーチの一発目に持ってきたのは、おおよそリーチに当たることのない、。
もしここで少しでも風見に通っていない牌が来たら、因幡はオリていたかもしれない。
そしてこのを切った直後
風見が、因幡の当たり牌、を掴んでしまう。
「掴んでる……」
アガった因幡すらも、同じ事務所の風見に降りかかる不運を嘆いた。
心根の優しい彼女だからこそ、出た言葉だろう。
しかし麻雀というゲームは、いつこの不運が自分に降りかかるかわからない。
因幡の去年の神域リーグの個人成績は、マイナスだ。辛かった経験があるからこそ、風見の気持ちを慮ることができる。
だからこそ、勝った時は目一杯に喜ぶ。
自分を応援してくれるファンのためにも。
当たり前のことのように見えて、それが一番正しい姿なのだ。
因幡が7万点超えの見事なトップ!
チームは1着2着1着の素晴らしい成績で1日にしてトップに躍り出た。
ヘラクレスはまさに絶好調と言えるだろう。
親番でアガリを決め、要所でも勝負してアガリを拾った勝が2着。因幡が圧倒的な活躍を見せたこの半荘での2着は、上々の結果だろう。
たろうは因幡に2回の12000を放銃するも、意地を見せて3着。流石の打点力だった。
風見が余りにも苦しいハコ下ラス。
グラディウスに降りかかる不幸は、どうやらまだ晴れないらしい。
しかしまだ第2節だ。次節こそ抜け番だが、まだまだ先は長い。トップが大きいこのルールであれば、ここから優勝だってなんら無理な話ではない。
去年苦しい想いをした因幡が、新年度になって嬉しいトップ。
彼女が1番、神域リーグでのシンデレラストーリーを歩んでいるように思う。
ドラフトにかかることすら絶望的だと思っていた去年。そこから半年誰よりも精力的に活動を行って。
そして今年また、ヘラクレスの看板としてチームを率いている。
狙うはただひとつ。去年掴めなかった――優勝だ。
『因幡はねるのハネマン麻雀1』7月3日発売です。
皆さんどうぞよろしくお願いします。
……帯は読めません。
最高位戦日本プロ麻雀協会47期前期入会。麻雀プロ兼作家。
麻雀の面白さと、リアルな熱量を多くの人に伝えるため幅広く活動中。
Twitter:@Kotetsu_0924