”分かれ道のヘラクレス”
浅井堂岐、苦難の先にある
栄光を求めて
文・渡邉浩史郎【木曜担当ライター】2024年10月3日
第1試合
東家:本田朋広(TEAM RAIDEN / 雷電)
南家:猿川真寿(BEAST X)
西家:内川幸太郎(KADOKAWAサクラナイツ)
北家:浅井堂岐(セガサミーフェニックス)
二週連続ギリシア神話の話となってしまうが、”The Choice of Hercules”という言葉がある。
日本語にするなら”ヘラクレスの選択”。英雄ヘラクレスが多くの試練を自ら選び乗り越えて最後には神の座に上ったことになぞらえて、『安全な道と苦難の道のふたつがあった時に苦難の道の選択をすること』を指す。
その言葉を元にバロック様式の巨匠、アンニーバレ・カラッチが描いたのが本観戦記のタイトルにもなっている”分かれ道のヘラクレス”。
快楽の先にある堕落か、苦難の先にある栄光か。
言うまでもなく逆襲のヘラクレスはとうの昔に苦難の道を選択し、皓王位・雀王・そしてMリーガーという栄光を掴んでここに立っている。
だが栄光を掴んでからでも、まだまだ試練は続く。
【東3局】では、3人リーチに囲まれ……
【東3局1本場】では速い親リーチに対して罠のような手牌価値が上がるツモ。当然押し出されたが……
リーチ・ドラドラ・そして裏3の18300の放銃となってしまう。
目に見えて自分に入ったは相手の裏3の暗刻。つまりはラス牌。
「これさえ引かなければ……」
そう運命を呪いたくもなるが、試練はまだまだ続く。
【東3局3本場】
さらに内川が和了りを重ねて目下二着争いとなってきた。
堂岐は四巡目ににくっついて、かなり期待できる手牌になってきた。
7巡目、引きでを落とすと両面両面のイーシャンテンに構えることもできたが、出来合いのイーペーコーの打点を崩さない+の重なりが期待できそうなピンズが安い河ということで形を継続。自身の河にとあることから、ピンズの両面が埋まれば単騎も辞さない構えに見えたが……
しかしまたしても先行リーチは親の内川。瞬間ここと戦うのだけは避けたいと言われる王様リーチ。
同巡、堂岐に入った聴牌は単騎が残る最悪の裏目の形。先行リーチがかかっては自身に中筋の単騎の効果がなくなってしまう。
ここで堂岐に選択が訪れる。
一つは内川に中筋の→待ち変化で勝負のと行く道。
メリットは瞬間での和了り目があり、後々待ちの選択が出来ること。
デメリットはが宣言牌の内川のリーチはカンで放銃もあり得ること、変化すればが勝負牌になることだ。
もう一つはイーペーコーをほぐしてを切る道。
瞬間聴牌ではなくなるし、聴牌復活も少し遠くなるデメリットこそある。
しかし一発放銃を回避できる、両面両面のイーシャンテンに構える、と内川に対して安全な牌を落として進行できるというメリットがある。
内川のリーチも何でもある親とは言え、愚形ターツを二つ落としてから切りと剣呑だ。
親番2回とはいえ、これ以上本田と猿川に点差をつけられたくもない。ここは安全に切りもあるかと思われたが……
”ヘラクレスの選択”は! これは変化でも辞さない、苦難の道を征く者の構えだ!
次巡のもぶっぱなす! そしてその裏で……