こみ上げた涙は、
心にしまった
朝陽にいな
襲い来る不運に
その身を焼かれても
折れぬ貴方は美しい
神域リーグは中盤戦の第4節に突入。
去年の第1回大会に負けず劣らず、今年の神域リーグも素晴らしい盛り上がりを見せている。
麻雀と言うゲームは必ず勝者と敗者が存在する。
点棒を競うこの競技は、だいたいこの中盤戦に差し掛かると、徐々にチームポイントに開きが生まれ始めるものだが。
今年の神域リーグもその例に漏れず、チームポイントランキングに少なくない差ができ始めていた。
その中で、苦しい戦いを強いられているのが、チームグラディウス。
ここまでチーム全員トップが無い……どころか、2位すらない。
全てが3位と4位でポイントを失い続ける厳しい展開に見舞われていた。
チームとして再起を図るこの第4節。
トップバッターを任されたのは、朝陽にいな。
その中で、彼女の配信の枠タイトルは『できることを、全力で!』。
苦しい状況はわかっている。それでも麻雀というゲームは、自分にできる最善を積み重ねることしかできない。
だからこそ、できることを、全力で。
チームを救うため。
彼女の戦いが始まる。
第10試合
東家 歌衣メイカ (チームアトラス)
南家 因幡はねる (チームヘラクレス)
西家 渋谷ハル (チームアキレス)
北家 朝陽にいな (チームグラディウス)
東1局
朝陽の手に悪くない手牌が入っていた。
を引いてイーペーコーが完成。
朝陽の手が一度に伸びるが
ここは目一杯の切り。
どこも逃せないのなら、安全牌候補のを切るよりない。
朝陽の強い意志が見え隠れしている。
ドラのを引いてきて、切り。
現状カンが2枚切れで受けとして苦しい。
であるからこそ、はがくっついた時にの良形ターツになるので残す。
その上で、カンが先に入った時は47pのリーチが打てる構え。
バランスの取れた一打だ。
を引いてテンパイした朝陽。
が残り2枚のままであればリーチの選択肢ももちろんあったが、直前で歌衣からが打たれ、残り1枚になってしまったところだった。
なのでここはあまり時間を使わず、テンパイを外す。
流石に残り1枚ではリーチは打てない。
から切るのも丁寧だ。これで引きでのリーチが打てる他に――
この一見裏目の引きも、フリテンでリーチを打つ選択肢を残すことができる。
が4枚目ということもあり、の場況は悪くない。
ということで、ここはリーチ。
素晴らしい手順だったと思う。ここまでたどり着けない打ち手だって少なくない。
が、宣言牌のを親の歌衣にチーされ、その歌衣からが2枚出てくる。
残り2枚のは、歌衣の雀頭に使われていたのだ。
これで、残るは、1枚だけ。朝陽の表情に焦りが混じる。