【 #神域リーグ2023 第4節第10試合観戦記】朝陽にいな、襲い来る不運にその身を焼かれても 折れぬ貴方は美しい【文 #後藤哲冶 】

その同巡。打点を見て【白】の対子落としから見事三色のテンパイを入れていた渋谷。
1度はダマテンに構えたものの、【6ピン】はリーチ者朝陽の現物ではなく、更に自分も勝負手であまりオリることが無いと判断し。

ここでツモ切りリーチ。
カン【6ピン】の待ちこそ悪いが、打点は十分だ。
【6ピン】は、残り1枚。

悪い流れは、まだグラディウスの足を掴んで離さない。
残り1枚しかなかった【6ピン】は、一発で朝陽の元に。

「きついきつい……けどまだいける」

今の朝陽のように、どれだけ正しい手順を踏んだとしても、勝てないことがあるのが麻雀。
そしてそれを分かっていても、心を制御するのは、簡単なことではない。
だが、朝陽にいなは再び前を向いた。

前を向いて、自分にできることを全力でやるしかないと切り替えて。

そんな朝陽に対して。

――麻雀の神様はあまりにも厳しかった。
流局を挟んだ、東2局1本場の出来事だった。

6巡目。手牌に一切不要な【1マン】を河に並べたその瞬間。

渋谷から放たれた重い重い一撃が、朝陽の身体を容赦なく貫いた。
東三色ドラ3の12000。

僅か、僅か3局で、朝陽の持っていた25000点の点棒は全て消え去り、ハコ下に沈んだ。

ロンと言われた瞬間、朝陽は黙ってその牌姿を眺めた。
奪われていく点棒を見つめ、そして。

「……いたい」

と、そう一言だけ呟いた。

重く、苦しい言葉だった。

それでも、次の瞬間には。

「東3局、ドラは【1ソウ】です」

普段から行っているルーティーン。
状況の整理を、始めた。

なんという精神力だろうか。
今も尚、降りかかった不運はその精神を蝕み、今にだって叫び出したいはずなのに。
朝陽は堪えた。
出てきた牌と向き合い、最善を尽くすために。

勝負は、まだ終わってなどいない。

東3局は歌衣が1300、2600をツモり、東4局へ。

「これは、戦う日が来たね」

朝陽に、ようやく好配牌が訪れた。
ドラは【4マン】。比較的全て使いやすい形で、使い切ってアガることさえできれば12000点が保証されている。

丁寧に、進めていく。
欲しいのはタンヤオ牌か、役牌。
役にならない字牌と一九牌を処理しつつ、必要な牌を集めていく。

「頑張ろう」

その一言に込められた想いが、どれほどのものなのか、測り知れない。
その身はボロボロになりながらも、心は折れてなどいない。

どうか、この手を成就させてあげたい。
そう思った視聴者は、きっとグラディウスのファンだけではないはずだ。

しかし時を同じくして、因幡にも好配牌が入っていた。
できればドラの【4マン】を重ねてリーチをしたかったが、【7マン】重なりも悪くない。
ピンフのみにはなってしまったものの、ここはリーチで攻める。

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